1/13 【読む】清瀬六郎『遥か昔のエジプト精神』


・清瀬六郎『遥か昔のエジプト精神』

https://kakuyomu.jp/works/16817139556810135815


 とある女子高の名門マーチングバンド部は、まともに練習ができていない状況のまま、地元の祭りのパレードに参加しなければならないという問題を抱えていた。部長を含めた幹部たちの間では、雨乞いで雨を降らせて、パレードを中止にしないかという案が出る。少女たちの繊細な心の動きを残酷なまでに正直に描写した現代ドラマ。

 私が主催した自主企画「問えば響く君の答え」の「雨を降らすのは誰?」への参加作品。


 こちらの一作、「パレードの日に雨が降るかどうか」までを描いているのだが、その瞬間が来るまで女子高生たちの人間関係や心情も細かに描いている。地の文の皮肉めいた言い回しも印象的。

 それぞれ登場人物たちの性格や思惑も異なっていて、常に牽制し合っているのがぞわぞわした。女子同士だからこそ、見た目の良さがステイタスに直結しているのも生々しい。


 だからこそ、言動によってあっさりと掌を返されるのも怖かった。裏の事情を知らない人たちから見たら、という部分も絵が描かれているからこそ、恋にも似た羨望が落胆に変わる瞬間が恐ろしい。

 私も、小学生の頃は金管バンド部でパーカッションしていたころを思い出した。しかも、主人公のようにあまり上手くないポジションだったのも。とても一生懸命やっていたわけでも、大失敗したこともなかったけれど、高校生になってもコンクールの会場で迷子になる夢を見るくらいには、印象的で張り詰めた日々だったんじゃないかと思う。


 余談。

 こちらの一作で、「問えば響く君の答え」の「雨を降らすのは誰?」への参加作品を自分の以外は全て読み終えた。


 質問の答えとして、「神様」あるいはそれに準ずるものが一番多かった気がする。私の作品もそんな感じだったし。

 そして、「神様とは何か?」という部分を深堀していた作品も多いような印象だった。雨は気象現象と分かっている現在に対する問いだからこそ、改めて「神様」という存在を問いただす内容になったのかもしれない。




















 

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