第4話 こんなクラスメイトたち。
「翔也、それはどう考えてもアウトやろ」
「やっぱそうだよな……」
翌朝、2年B組の教室。
俺は目の前に座っている
ある日突然義姉ができて二人だけで住むことになりました。って、まあ青少年の道徳的に考えたらふつーダメな話しだろうな。
「やけど俺からすれば羨ましいけどな。いきなり美人で巨乳のねーちゃんができて一つ屋根の下で同居できるとか。しかも二人っきりで」
「おい、誰も美人で巨乳なんて言ってないぞ」
「なんや違うんか?」
「いや違うというか……」
田嶋の追求に、俺はつい言い淀んでしまう。
美咲はたしかにかなり美人の部類に入るだろう。
初対面の時なんて、なんでウチにモデルみたいなやつがいるんだよと思ったぐらいだしな。あと胸元事情に関しては俺の目測だとおそらくFだ。
って何をバカな事を考えてしまっているんだと首を振っていたら田嶋が再び口を開く。
「ほんでその話しはクラスのみんなにも言うんかいな?」
「バカ、言えるわけないだろ」
「まあそうやろなー。そんな話ししたらクラスの男連中からめった刺しにされて
「お前な、そんな物騒なこと言うなよ……」
縁起でもないことを言ってくる田嶋に対して白けた視線を送っていたら、相手は「冗談やって」とまるで漫才でも見ているかのようにケラケラと笑っていた。
こいつは一年の時から同じクラスで高校に入ってから初めて出来た友達だ。
狐目でどこか飄々とした態度が胡散臭そうにも見えるが、意外と根はいいやつで男女問わず友達が多い。
そして顔が整っているため女子からの人気はけっこう高く、俺とは違い女の子とのコミニュケーションにも慣れている。
「まあでもこれで翔也にもついに春が来たってことやな。お前けっこうモテるくせに全然彼女作らんからなぁ」
「嫌味のつもりかよ。俺はお前と違ってモテたこともないし、それに歳上は好みじゃない」
「なんやロリコンやったんか」
「どうしてそっちに走った?」
さっきから意味のわからないことばっかり言ってくる相手に対して、俺は呆れた口調で言い返す。
コイツは俺の恋愛事情について何かと首を突っ込みたがるところがお節介で困ったところだ。
だいたい恋愛なんて分野は足を踏み入れてしまってもロクなことがないし、世の中にはこんな不幸話しだってある。
それは小さな時からずっと仲良しだった幼なじみの男女が中学生になった頃、周りからも「告白すれば絶対付き合えるよ!」と満場一致でGOサインをもらった男が勇気を振り絞って告白した結果、相手の女の子から「ごめんなさい。異性として見たことがないの」と泣きながら断られた挙げ句、疎遠になってしまったという不幸な話しが。……まあ俺の実体験の話しなんだけどな。
俺よくあそこから立ち直れたよなー、と自分で自分のことを感心していたら、今度は頭上からお淑やかな声が聞こえてきた。
「おはようございます。二宮くん、田嶋くん」
「おっ、
田嶋がテンション高く挨拶を返した先にいたのは、他の女子たちとは一際違う眩しいオーラを醸し出す女の子だ。
雪のように白く滑らかな肌に、シルクのような艶のある黒髪。
ほとんど化粧をしていなくても人目を惹くほど美しい顔立ちはもはや国宝級といっても過言ではなく、清楚系美少女という言葉はまさにこの子のためにあるようなものだろう。
この学校の二大美少女という肩書きをも持つ彼女の名前は、
「ふふ、褒めてくれるのは嬉しいですけど何も出てこないですよ」
「えーねん。その笑顔見れるだけで俺たちは満足や」
なっ翔也! と上機嫌になぜか俺と肩を組んでくる田嶋。
というかコイツ、ほんとよくポンポンとそんなキザな言葉が言えるよな。
将来ホストとかになるんじゃないだろうな? と友人の進路を心配していたら、神井寺がふとこちらを見た。
「二宮くんもおはようございます」
「ああ……おはよう」
改まってわざわざ俺にまで挨拶をしてくれるところが神井寺らしい。
本来であれば一定レベルを超えてしまった美少女という存在は近づきにくかったり話しかけにくかったりするのだが、神井寺は誰とでも分け隔てなく接してくれてその性格も申し分のないS級の美少女なのである。
その為、「え、もしかして俺のことが好きなの?」と愚かな勘違いをして告白する男子も後を経たないが、見事に撃沈して積み上がっていくその敗者の数だけでJリーグが結成できるほどと噂されている。……って、誰だよこんな意味不明な噂流したやつ。
どうせバカな男子なんだろうな、なんてことを考えながら廊下の方をふと見やると、いつものように他クラスや他学年の男子たちが教室の前を怪しいぐらいにウロウロとしていた。
まあその大半、というかほとんどの奴が神井寺見たさと――
「……だる」
ガヤガヤと賑わっている教室の中でその声がハッキリと聞こえた直後、今度は教室中が打って変わってシーンと静まり返った。
そして皆の視線は窓際の席で一人スマホをいじっているギャルへと向かう。
うわー、今日もめっちゃ機嫌悪そうだな……。
俺はゴクリと小さく唾を飲みながら彼女を見てそんなことを思う。
制服の規制が緩いとはいえ段違いに明るい髪の色に、威圧感がハンパないキリッとした大きな猫目。
そしてスレンダーなモデル体型を強調させるかのような短いスカートからはエロ……いや失礼、かなりセクシーな感じでふとももまでもが見えてしまっている。
神井寺と肩を並べる美少女でありながらその姿も性格もまったく真逆で孤高のギャルとも呼ばれている彼女の名は
そう、なんとこのクラスには二大美少女の両翼が揃ってしまっているのだ。
「おい誰か羽鷹さんに話しかけてこいよ」
「羽鷹は無理やろ。それやったら俺は神井寺やわ」
「やっぱ羽鷹さんってウチらと違ってクールでめっちゃカッコいいよなっ」
再び賑わい出した教室や廊下からは、神井寺だけでなく羽鷹のことについても話している声がよく聞こえてくる。
部外者である俺が言うのもなんだが、毎日毎日これだけ人から注目されてたらそりゃ機嫌も悪くなるだろうな。
そんなことを考えながらもう一度羽鷹のことを見たら、彼女がこちらを睨んでいることに気付いて俺は慌てて視線を逸らした。
これは気のせいだと信じたいのだが、このクラスで何故か俺だけよく羽鷹に睨まれているよな気がするんだよなぁ……。
お義姉さんと二人で暮らし始めたらクラスのS級美少女たちがやたら絡んでくる。 もちお @isshi
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