第48話 監視されてる……?

「せ、せっかくなんで渚さんもよかったら一緒にラーメン行きます?」


 このままだと俺にも阿比留にも支障が出そうなので、どうにかして機嫌を取りに行く。


「え、いいの⁉」


「もちろんですよ。ラーメン好きですか?」


「大好き! 五月くんの次くらいに好きだよ!」


 待ってましたと言わんばかりの満面な笑みを浮かべる渚さん。

 まだカウンターの裏に隠れている阿比留か、こちらのやり取りを見ながら複雑な表情を浮かべていた。


 嬉しさと、怒りと、あとは……嫌悪と至福の混ざった顔。一体どんな情緒だったらその表情ができるのか不思議で仕方がない。


「阿比留ちゃんも私がついていってもいいよね? なんも文句ないよね?」


「ちなみに! ……わ、私は最初からつきちゃんを誘おうとしてたんですよ!」


「あ、そうだったの?」


「先輩に連絡してもらおうと思ったところに、ちょうどつきちゃんが来たんです!」


 言い訳が苦しいぞ阿比留。どう捉えても嘘がバレバレである。

 目は泳いでるし、額から変な汗はかいてるし、呂律も回っていない。

 あからさまな嘘に渚さんは、


「そんな事話してなかったと思うけど……一緒に行けるなら結果オーライだからまぁいっか!」


 ポンと手のひらを叩く。

 あ、これ絶対に盗聴してたやつだ。

 明日にでもお店の中を探索して盗聴器を探さなくては。あとは私物もチェックしておこう。


「渚さんに色々言われた私が、私と先輩が2人でどこかに行くわけないじゃないですか~」


 アハハを苦しい笑いをする阿比留に、


「ライブ前、朝から集合してカフェに行ったっていう情報を耳にしたんだけど?」


「それは……」


「別に会場集合でいいのに、わざわざ特大パフェまで注文しちゃって」


「あの~?」


「ちょっと揉めたらしいけど、結局イチャイチャしたっていう話じゃん」


「なんでそこまで詳しく知ってるんですか⁉ あとイチャイチャなんてしてませんから!」


 淡々と事実を並べる渚さんに、涙目で焦る。


「先輩バラしましたね⁉ 言いましたよね絶対!」


「いや俺は何も言ってないんだけど……」


 怒りの矛先は俺に向き、肩を揺さぶりながら責め立てるが、本当に何もしていない。


 会場でグッズを買ったことは渚さんに話したものの、それ以前のことは俺の口から何も言っていない。


 ……なんか寒気がする。


 盗聴器、GPS、隠しカメラ、探偵……上げるとキリがない。

 お金の力がある以上、何で行動を監視されていてもおかしくはない。

 ……スマホの中身、特に検索履歴とかもも見られていたら死にたくなるなこれ。

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