第34話 キュンかわサブリーダー
「あ! 見つけたぁぁぁ~‼」
廊下を歩く俺たちの後ろから、突然女子の張り上げた声が聞こえる。
「あれは……まさか」
振り返り、こちらに向かってくる女子の姿を見ると、阿比留は大きく口を開ける。
「栞ちゃん~! 今向かってたところだよ~!」
「もう~遅い! 私待ってたんだよ?」
「ごめんねぇ~。2人に衣装お披露目してたら遅くなっちゃった」
叱られる渚さんはペコリと頭を下げる。
「えっと~、どちら様ですか?」
見るからに『スター☆ブライト』のメンバーなことは確実だが、ファンではない俺は名前が分からない。
「先輩知らないんですか⁉ しおりんですよ! スター☆ブライトのキュンかわ系キャラの!」
渚さんに聞いたつもりだったのだが、横から阿比留は興奮気味に答える。
「キュンかわ?」
「そう! 身長が小っちゃくてキュートで可愛いからキュンかわです!」
「……そうなのね」
そう言いながら顔を横へと向けるが、先ほどまで居た栞さんという人はどこにもいない。
「あれ、どこに――」
「下よ、下」
言いかけると、胸元辺りから声が聞こえる。
その声に従い舌を向くと、そこにはムスーっとした表情を浮かべた美少女がいた。
「すみません見えなかったです」
確かに小柄だ。死角に入るくらい身長が小さい。大体140センチといったところか。
「この2人が噂の渚の友達であってる?」
俺と阿比留の顔を交互に見ると、渚さんに聞く。
「五月くんと阿比留ちゃんだよ~」
「これが例の五月くんね……渚が言う通りイケメンだね」
「でしょでしょ~? もうほんっとかっこいいの!」
「えっと~初めまして、栞さん。三岳五月です」
じーっと顔を見られた俺は、とりあえず軽く自己紹介をする。
ちょっと待て。俺、何を噂されてたんだ?
渚さんから聞いたということはどうせろくでもないことに決まっている。
イケメンと言われたのは嬉しいが、それよりも不安が募る。
「私は、スター☆ブライトのサブリーダーの鳴海栞(なるみしおり)よ。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「私、阿比留胡音って言います! しおりん……じゃなくて栞さん! 以後お見知りおきを!」
横でソワソワとしていた阿比留は、テンパりながらも自分の存在を主張する。
「別に改めなくていいわよ。気軽にしおりんって呼んでちょうだい」
「分かりましたしおりん!」
満面の笑みを浮かべる阿比留。
この栞さんが渚さんに続いてスター☆ブライトの偉い人なのか。身長のわりに大きな役職をお持ちだ。
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