第28話 現役JKの注文

結局、阿比留に強引に連れていかれ、ライブ会場近くにあるオシャレなカフェに連れてかれてしまった。


集合した場所から電車で約1時間半。

まだ朝の7時半なので、今の時間はモーニングタイム。他のお客も思った以上に少なく、これならゆっくりと居れそうだ。


「先輩は何食べます?」


メニューを見ながらも、俺にそう聞いてくる。


「うーん、美味しそうで迷うな……」


バイト先以外でカフェなど行ったこともないので、どれも新鮮で美味しそうなものばかりだ。


美味しそうなんだが、目が痛くなるくらいチカチカと蛍光色が使われているものが多い。


今のカフェってこんなものばかりなのか? バイトのしすぎであまり遊ばないから、最近の流行などが全く分からない。

男子高校生にしては知識が乏すぎるだろ我ながら。


バイト先のいい意味で古臭いものに慣れているから、店内が落ち着いていても料理がこれじゃ気が休まらない。


なるべくJKがスマホを構えないようなものを頼みたいところだ。


「そうゆうお前は何にするんだ?」


参考程度に、現役JKが何を頼むかを聞いてみる。


「いやぁ~、こんなに選べると迷っちゃいますよね~」


「何を選んでも正解だもんな多分」


「そうゆう意味じゃなくて、デセールではあり得ないなって」


フッと自嘲気味に笑う。

今更だが、俺たちの働くカフェの名前は『喫茶デセール』。


デセールとはフランス語でデザートという単語なのだが、お店にあるデザートと言えば渚さんがよく頼むミルクレープとシフォンケーキ。

他にもあるが、選べても数種類だ。


なんでお店の名前をいかにもデザートを推しているようなものにしたのか。店長の意図が全く分からん。


「よし決めた! 私はこれにする!」


と、目を輝かせてメニューを指差す阿比留。


「朝から重いな」


阿比留が選んだのは、特大のイチゴパフェ。

数種類のイチゴがふんだんに使われ、その上には可愛いイラストが描かれたアイシングクッキー。


値段もコーヒーとセットで2000円超えと、モーニングの領域を超えている。

なんて朝から豪勢なんだろう。これから散財するというのに。


渚さんのグッズを買うために、来月のバイト代前借りしたとか言っていたのに、ここで使っていいのだろうか。

まぁ俺は阿比留の財布事情なんて知ったことではないけど。

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