第27話 勉強のためです!
「先輩おはようございます~!」
「おう~」
2週間後の早朝。俺と阿比留の姿は駅前にあった。
今日は渚さんが所属する『スター☆ブライト』のライブ当日。
「朝6時って……なんでこんな朝早いんだよ」
「会場近くのカフェに行くためです! あとは渚さんのグッズを買うため!」
「どう考えても朝早すぎるだろうがよ」
開場は17時でライブ開始は17時半。熱狂的なファンは、グッズ目当てで朝から並んだりもするだろうけど、俺と阿比留は『スター☆ブライト』のファンではない。
しかも、通常席ではない俺たちは列に並ぶ必要すらない。
渚さんに言われたのは、裏口に16時半頃。
だからこんなに朝早い必要などないのだ。
「カフェくらい一人で行って来いよな。俺はまだ寝てたいんだけど?」
寝ぼけた目を擦りながら言う俺。
「先輩。これは勉強でもあるんですよ?」
「なんだ?」
「バイト先をより良くする為に他のカフェも見て勉強するんですよ!」
「もう学ぶことなんて一つもないと思うんだが?」
あんな自由で楽なバイト先で働いているのに、何か不満でもあるのか?
逆に自由過ぎて俺は少し不安……というか怖いけど、阿比留なんて他のカフェの運営スタイルを見たら「ブラック!」とか言いそう。
「私は思ったんです。バイト先には足りないものがあると」
ピンと人差し指を立てる阿比留。
「というと?」
「『映え』が圧倒的に足りないんですよあそこは!」
「は?」
「他のカフェは可愛くてキャピキャピの商品を出しているのに、うちは昔ながらのコーヒーとかスパゲッティとかだけじゃないですか! デザートも古臭いものばっかりで」
「だから何だよ」
「私は他のカフェを参考にして、映えを意識した可愛い商品を作りたいんです!」
自信に満ちた顔でガッツポーズをする。
『映え』ね……。
阿比留の意見には一理ある。マスターの趣味だろうが、お店は昭和レトロで古臭い。
現代の洒落たBGMではなくジャズを流したり、お店の雰囲気も木目や黒で統一されていて暗い雰囲気がある。そのおかげで入るのに少し勇気がいるという口コミもある。
しかしだ。そうゆうオシャレなカフェもいいが、こうゆうレトロ喫茶も落ち着いていて俺は好きだ。
「あのな、身近過ぎて気づいてないだろうけど、昭和レトロなカフェも映えるし需要はあるんだぞ?」
SNSなどでもレトロ喫茶などは需要
があり人気も高い。現代の人には昔のモノが珍しいものになり、それが一周回って映えになる。
「確かに、完全に盲点でした……」
額に手を当てると、しゅんとした表情を浮かべる阿比留。
「だろ? だから他のカフェになんて行かなくても――」
「だとしたら普通に美味しいパフェが食べたい! インスタ映えするものが食べたい! 正直昭和レトロなものに飽きてるから!」
「あ、ダメだこりゃ」
自分の欲求のために行くことに進路変更しやがった。
バイトとか関係ないなら一人で行けよな……とか言ってもどうせ無理やり連れかれるから言っただけ無駄なんだけど。
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