第23話 ヒ・ミ・ツ
「予定は追って五月くんに連絡するから安心してね」
ミルクレープをパクリと食べながら、スマホをイジる。
「え、先輩とつきちゃん連絡先繋がってるんですか!」
「まぁね? 私と五月くんはもうそうゆう関係だから」
「もしかしてただならぬ関……係」
「それはヒ・ミ・ツ」
「誤解を生むようなことを言わないでくださいよ!」
ただ連絡先を知っているだけで、なんでその考えが出てくるんだよ。
アイドルと繋がってたら、確かに一般人なら不信に思うかもしれないが、阿比留は俺たちの関係を知っている。
それなのにいちいち余計なことを……渚さんも変なことを言うし……
この2人に会話をさせてはいけないな。誤解に誤解が重なりそうで怖い。
「先輩につきちゃんは一億年早いですよ……」
ジトっとした目を向けてくる阿比留。
「いやだから何もないっつーの」
「隠してるだけで本当は~?」
「もし俺が渚さんと何かあったなら、俺はこのバイトを辞めてるはずだ」
「竿だけ持ってるヒモになってる……すごくあり得る話」
「おい言い方」
残念ながら俺は正真正銘のチェリーボーイ。残念ながらな……自分で言ってて泣けてくる。
「五月くんがダメ男になって、私を性処理道具として見て毎日ギャンブルに行くためのお金を渡したりする生活……いいっ!」
頭の中で想像したか、顔を歪めて鼻の下を伸ばす。
「……自分から本性さらけ出してどうするんですか……」
と、額に手を当てる俺。
せっかく阿比留と店長には本性を隠している態だったのに、これじゃ全く意味がない。
もうバレてもいいと思っているんだろうな。
これからこの場所に入り浸るなら隠していたらデメリットしかない。
阿比留とも一件あったし、既に自分からバラしている可能性だって十分ある。
「でも先輩はヒモにならないでちゃんとここで働いてもらうんですからね!」
「誰がヒモになるなんか言った?」
「先輩ならつきちゃんに落とし込まれそう……あの美貌で迫られたら私だったらダメになる」
「そうなら俺はもうここを辞めてるから安心しろ」
「ま、そうですよね~。先輩はこのバイト先好きですからね~」
どこか安心そうな表情をする阿比留。
バイト先の先輩がアイドルのヒモになるなんて見たくないだろうからな。そんな顔をするのも分かる。
「何をしても五月くんは墜ちないからね~。私も策を色々と考えないといけない」
「やめてください」
「一億円くらい現金で見せたらいいのかな?」
「……追い出しますよ?」
細い目をしながら渚さんを見ながら俺は言う。
そんな札束を見せられたら、流石の俺でも心が揺らぐ。
悪魔の囁きは本当にやめてほしい。俺をヒモ&クズへの道へ引き込まないでほしいものだ。
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