第22話 私のライブに来てくれませんか!
「さて、落ち着いたところで今日の本題にへと入りましょうか」
パンと手を叩くと、コーヒーを飲みながら言う渚さん。
「何か話すことがあったんですか?」
「そりゃー五月くんと話すことなんて山ほどあるけど、今日はちゃんと話したいことがあったんだよね」
「……そうですか」
話の内容が怖すぎる。また変な話だったらどうしよう。
脳裏にそんなことが思い浮かぶが、渚さんの胸元には阿比留がいる。
引くような話はしないだろう。
「ま、単刀直入に言うと――」
バッグの中から何か漁ると、とある紙をテーブルに差し出してくる。
「今度の私のライブに来てくれませんか!」
テーブルに置かれたのは、二週間後に行われる『スター☆ブライト』のライブチケット。
収容人数3万人もの国内最大級の場所で行われるものであった。
「ライブですか……」
「つきちゃんのライブ⁉」
チケットを手に取るとじーっと見つめながら呟く俺の横で、目を光らせながら声を張る阿比留。
「そうそう。次のライブは『スター☆ブライト』史上最高のライブになるし、私のバースデー特別講演もするから見に来てほしくって」
「行きます行きます! 絶対に行きますよ私は!」
「お前には聞いてないぞ多分」
食いつきが激しいな。人の話に勝手に入って来て当人よりも盛り上がる奴って迷惑がられるよな。
この話の場合は逆に助かるまであるんだけど。
「阿比留ちゃんはまずは置いておいて、五月くんは来てくれる……?」
上目遣いでこちらを見てくる渚さん。
ぶっちゃけ興味はある。
最近奇行ばかりで忘れていたが、渚さんはれっきとした人気美少女アイドルなのだ。
生でアイドルをしている渚さんは見てみたいし、手に入れることが難しいと言われている『スター☆ブライト』のライブに無料で行けるのは嬉しい。
座席にもよるが、通常価格で一万円以上。転売されたものになると数十万円もするライブだ。
しかし、一人で行くのには少し勇気がいる。
アイドルのライブなんてそもそも行ったことがないし、何も分からない状態で行くと確実に浮く。
そう思った俺は渚さんにこう提案してみる。
「阿比留も一緒に行けるなら、行ってあげてもいいです」
何かとこうゆう場面で心強いのは阿比留だ。
阿比留も行きたがってるし、俺も頼もしい味方が付く。これぞWINWINだ。
「先輩! いいんですか⁉」
「俺一人で行くのは不安だからな。こうゆうのに慣れてる人いた方が助かる」
「神すぎ~~! 先輩のシフトこれから週一で変わってあげますね!」
「それはいい。俺のバイト代が減るだけだから」
あとは渚さんの承諾を得るだけなのだが、
「五月くんが来てくれるなら別にいいけど~」
ムスーっと何やら不満げな表情を浮かべている。
「それじゃ、決定で! いいですよねつきちゃん!」
「はぁ……マネージャーに連絡して座席一つ増やしてもらわないと。関係者用の席空きあるのかな……」
「しかも特等席で見れるぅぅ~!」
ボヤく渚さんに、阿比留は猫のように頬を擦り付ける。
「そんな席で見るのか……」
普通のチケットを見せられたから、てっきり俺は一般人として見に行くと思っていた。
しかしまさかの関係者用の席。
どうやって俺たちを関係者として招き入れるのか……そこら辺は渚さんに任せよう。
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