第15話 変な人って思われちゃう!
「三岳くん、渚さんを中に連れてきてもらえる?」
テーブルのセッティングをしている俺に、店長はそう声をかける。
「え、俺がですか?」
「あれでは、いつ通報されてもおかしくないからね」
店長の視線に釣られ、俺も窓へと目を向ける。
「不審者極まりないですね……あれ」
通行人が渚さんに冷ややかな目を向けている。まさかあの人気美少女アイドルとは知らずに。
「阿比留なら喜んで行きますよ多分。仕事変わってきます」
「いや、三岳くんが行ってきて」
「なぜそこまで俺にこだわるんですか……」
「友達になってたって自分で言ってたよね。外で待っている友達を三岳くんは放置するのかい?」
「全部聞いてたんですね……」
どうやら阿比留と話していた内容をすべて聞いていたらしい。それに店長命令なら断れない。
しかし、店長もこの話を聞いていたなら俺の身に危険があることも分かっているはずだ。
多分、面白いことになるからコーヒーでも飲みながらゆっくりとそのやりとりを見たいのだろう。
今はお客もいないし、絶好の傍観日和なのだろう。
従業員の安全を第一に考えるのが店長本来のあり方なのだが、うちの店長はアブノーマルだから仕方がない。
「……行ってきます」
肩を竦めながらも、俺はお店の外へと向かう。
「あ、五月くん♡」
店外に出ると、俺が声をかける前に渚さんはこちらへと近寄ってきた。
「何してるんですか? お店の中入らないんですか?」
「その……入ろうとはしたんだけど……中々入りにくくて」
「いつも普通に入ってくるじゃないですか。挙動不審ではありますけど」
「わ、私挙動不審なの⁉」
「はい。ものすごく」
帽子やフードをかぶりながらも、キョロキョロと周囲の様子を伺いながらも店の中へ入ってくる。
本当に不審者だ。
「今日は違うの……五月くんと色々あったから、どうやって顔を合わせていいから分からなかったの……ほら、2人じゃないわけだし」
店長と阿比留のことを気にしているのか。
確かに、俺と2人の時に見せたような表情や言動をするとドン引きされる可能性があるからな。
まぁその心配はないのだけれど。
「大丈夫ですよ。今日出勤している人達にはそれとなく渚さんとのことを伝えておいたので」
「わ、私と五月くんの関係バレちゃったの⁉」
俺の言葉を聞くと、渚さんは涙ぐみながら見つめてくる。
「え、何かバレちゃマズかったですか?」
「マズいよ! 私、変な人って思われちゃう!」
いや変な人だよ。少なくとも俺の目にはそう映っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます