第11話 なんで嘘を吐くの?
「ちょっと待ってください! 俺のための貯金とか意味わからないんですけど」
「今説明した通り言葉のまんまだよ? 五月くんとの生活のために貯めてる貯金、ないしは五月くんが自由に使っていい貯金だよ」
「俺が自由にって……」
「安心して? 中身が無くなっても私が追加でお金入れておくし。今入ってるので足りると思うんだけど……」
「ちなみにいくら入ってるんですか」
「2000万円!」
パァとした笑顔で通帳の中身を見せてくる。
「にせんまん……」
思ってた桁の2個桁が大きいことに、俺は無意識に口が開く。
確かに、半月前くらいに別の口座から一括で振り込まれている。
……どうしたら俺のために2000万も入った口座を作るんだ。
こんな大金を笑顔で渡してくるって……金の亡者すぎる。
渚さんにとって2000万などはすぐに稼げる金額かもしれないが、俺にとっては大金もいいところだ。
受け取れるわけがない。
「私とこうして一緒に居てくれるなら、これからお金の心配をしなくていいんだよ? 私が五月くんの分を一生懸命稼いであげるから」
なんとも悪魔の囁きだ。
俺が頑張ってバイトをして貯めた貯金の何百倍のお金が入っている通帳をちらつかせながら言われると心が揺らいでしまう。
いやダメだ。俺はヒモになる気なんて一切ない。誘惑に負けるな俺!
「これは渚さんがアイドル活動を頑張って稼いだお金です。自分で使ってください」
持っている通帳を軽く押し返すが、
「こんな時にも私を気遣ってくれる五月くん……最高……今すぐ貢いであげたい」
どうやら俺の話は聞こえてないようだ。
このまま立ち話をしていたら渚さんのペースに持ち込まれる。
早く帰らないと。明日も学校があるし、今日は疲れたから早く寝たい。
「あのー、俺はこれから用事があるのでー……」
適当な理由でもつけてこの場から去ろうとするが、
「嘘。この後五月くんは帰るだけでしょ」
俺の手を掴み、真顔になる渚さん。
行動パターン知られてるんだったよ……言い逃れはできないか。
「どうして嘘を吐くの? バイト終わりはすぐ家に帰ってお風呂に入る五月くんがこの後友達と遊ぶはずがないし、なんでそんなに早く帰ろうとするの?」
「あ、いや……今日はなんか疲れたので早めに寝ようかなーと」
「なら最初からそう言えばよかったでしょ? なんで噓を言ったの」
怖い怖い。段々と渚さんの目に生気がなくなってきている。
これはどうにかしてでも、渚さんの納得する理由を考えないと。
一つでも言葉を間違えると、何をされるか分からない。この顔はガチの顔だ。
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