(6)


「サブ電源に切り替わりました!」


「メインコンピューターを再起動。完全起動までに十五分ほどかかります!」


 僅かな光が室内を照らす中、数人の男たちは視界が悪く、慌ててコンピューターを立ち上げたり操作したりしながら右往左往していた。


 ドタバタと騒がしい中で博士は陣頭指揮をとって、対応にあたっていた。


「丁寧かつ丁重にな。あと、バックアップを取りつつ、急な電源喪失にも対応しておくんじゃ」


 ここはデンジャータワーの地下にあるコンピュータールーム。

 タワーの電気や空調といったライフライン、そして防犯カメラなどといった警備システムも管理していた。


 それが突然コンピューターが強制終了してしまい、全ての機能が不全となってしまっていた。博士たちは復旧対応を行なっていたのである。

 博士はふと、自分の腕につけている腕時計に目をやったとき、白衣の懐から電子音が響き始めた。


 電子音のタイプで通話の相手がデンジャーからだと判り、恐縮しつつ通信端末機を取り出す。通話スイッチを入れたのと同時に、怒り溢れる声が発せられた。


『どういうことだ、博士! 全ての照明が消えていたり、扉が開かぬぞ!』


「デンジャー様、大変申し訳ありません。ただ今、迅速に復旧している最中でして……」


『何が起こっている? まさか攻撃されたのか?』


「いえ。今の所、そういった攻撃や侵入は確認されておりません。もしかしたら、システムの老朽化でショートした可能性の方が高いかも知れません」


『そうか。とにかく復旧の方を……まて、ティアの方はどうだ?』


「えー……。その……」


『どうした!』


「か、監視カメラの方も機能しておりませんので、様子の方は……」


『なに! ティアは大丈夫なのか?』


「エレベーターなども動かないので、勝手に動きまわるとかはないかと……」


『そんな憶測はいい! 至急、ティアの元へ行って身柄を確保してこい!』


「はっ、はい! 了解いたしました! それでは至急、ティア様の元へ兵たちを向かわせます」


 そう返事したあと、通話を切ろうとした時―――


『な、なんだ! あれは?』


 デンジャーの驚きの声が聴こえ、「どうしたのですか?」と博士が訊ねた後すぐに、怒轟と共に振動で室内が軽く揺れた。


 地下に居る博士たちは、突然の事態に周りが驚く中、


「まさか……」


 博士は、そうポツリと小さく呟いた。

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