(2)

 室内の照明が全て点灯して照らす。


 天井の換気扇が回り始めて、立ち込めていた煙が排除されていくと、サングラスの男の姿がハッキリと見えた。


着ている服は銃弾や爆風などで所々破れているが、中身……身体は一切傷付いていなかった。

 どこからか『パチパチ』と拍手音と共に、


「ご苦労」


 と、重く低い声が辺りに響き轟いた。

 別の場所で座り心地が最高の椅子に座して、男たちの戦いを一部始終モニターで観覧していた男がいた。


 髪はオールバックにした、鋭い眼光、年齢は五十歳ぐらいで、深いシワが厳つく強面の顔をより映えさせていた。彼の隣に居るだけで思わず臆してしまうほどの重圧を感じる威圧感を漂わせていた。


「素晴らしい。今までの戦闘タイプをいとも簡単に……」


 強面の男が機嫌が良い声で呟くと、背後に立っていた老人が恐縮しつつ口を開いた。


「お褒めいただきありがとうございます」


 所々汚れている白衣を着ており、後頭部のみに残された白い髪が綿菓子のようにふんわりしていた。その白い髪と同様に眉毛も白くなっており、やや長く垂れ下がっているのが特徴だった。

 白髪の老人は、話しを続ける。


「今までの戦闘タイプは“ドーピングナノ”に耐えられるように無駄な筋肉増強などを行なっていましたが、如何せん、その所為で動きが鈍くなっていました。しかし、あの者に投与した新型のナノは、細身の体型のままに身体機能を向上させ、また皮膚などもバイオコーティングでダイヤモンドのように硬く変質することが可能になりました」


「なるほど、それであのマシンガンの弾すら効かない訳か」


「そして次に注目するべき点は、あのレーザーです。あれはナノによって、体内にある水素を核融合させて、レーザーを放出させております。素手ながらも無限の武器を手にしているようなものです」


「全てにおいて最高のデキだな……」


「はい。あの“ナイツ”は、私が今まで造った中で最高の改造人間です」


 老人の自慢めいた口調と台詞に、強面の男は思わずニヤリとほころんだ。


「ナイツか……」


 サングラスをかけた男の名前である。


「気に入った。博士、あれは大量生産が可能なのか?」


「はい、デンジャー様。予算とお時間を頂ければ……」


「そうか、ならば直ぐに生産を行え」


 デンジャーと呼ばれた男は、意味ありげに含み笑いをする。


「あとは“完全人間(パーフェクト・ヒューマン)計画”だけか。そっちの方はどうなっている?」


「プログラムや装置の方は、ほぼ構築は完了しております。あとは素体の方だけなのですが……んっ?」


 話しの途中で、博士と呼ばれた男の懐から電子音が鳴り響いた。そこから、おもむろに通話端末機を取り出し、呼び出しに応じた。


「わしだ。どうした……うん? なに、それは本当か!」


 突然声が大きくなった博士に、強面の男が気に留める。


「どうした?」


「あ、デンジャー様……素体が、発見されたそうです」


「なに! それは本当か!」


 デンジャーの鋭い目つきが大きく開口して、勢い良く椅子から立ち上がった。

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