第二章 目覚めた完全人間

(1)

 薄暗い室内。

 一点のスポットライトが、サングラスをかけた長身の男を照らした。


 サングラスをかけた男性は、身体にフィットした黒い革ツナギのような服を着ており、それが良く似合っていた。

 その男から十数メートル離れた所に、同じような格好をした体格の良い男達が五人、立ちはだかっていた。

 体格の良い男達はそれぞれに銃器やナイフといった凶器を手にして武装していたが、サングラスの男だけは何も所持はしていなかった。


 何処からともなく『ピー!』と電子音が鳴り響いた。


 その瞬間、ナイフを手にした二人の男は挟み撃ちするべく左右に分かれてサングラスの男へと襲い掛かり、残りの三人は持っていた銃で狙い撃った。

 サングラスの男は身構えたり避ける動作をせず、その場に立ち尽くし、数多の銃弾が雨のように受ける。


 だが弾丸は、男の身体を突き抜けたりできず、全て跳ね返されたのだった。


 銃弾の攻撃から遅れて、ナイフを持った二人の男たちが挟撃する形でサングラスの男に斬りかかったが、サングラスの男はそれぞれの刃を左右の腕でガードする。銃弾をはね返した身体は刃物などでは傷つけられなかった。


 サングラスの男はナイフを払い除け、左にいた男に人差し指を向けて、指先から“一閃の光”を放つ。

 それはレーザー光線だった。


 心臓がある付近を撃たれた男は、貫通した場所を手で抑えて悶え苦しんだ。続けざまに右の男に素早い所作で回し蹴りを繰り出して、サッカーボールの如くふっ飛んでいく。


 落ち着く間もなく、再び銃声と共に銃弾がサングラスの男に浴びせられる。だが、先ほどと同じく全くダメージを与えられない。

 サングラスの男は弾丸の雨にも動じず、平然として自分を撃つ銃を持つ男たちの元へとゆっくりと進んでいく。


 攻撃している男の一人が肩にかけていたバズーカ擲弾発射器を取り、狙いを定めた。


 本来なら戦車相手に使用する武器だが、銃弾が通用しない相手(サングラスの男)にとって不足は無かった。バズーカのミサイルが撃ち放つ。


――ズッガーン!


 耳を引き裂く爆発音と共に大地を揺るがす衝撃が襲い、爆発の衝撃で地面が割れ、炎と煙が空に舞い上がった。

 身体の残骸すら残っていないだろうと、男たちは勝利を確信した――が、煙の中からレーザー光線が飛び出して、一人の男に命中した。

 撃たれた男は声も挙げられず、その場に倒れ込んだ。


 直後、サングラスの男は煙をかき分けて飛び出し、戸惑う男たちの間に割り込んで、三人に次々と重いパンチを食らわせてノックダウンさせた。

 最後の一人は銃を撃つ間もなく、サングラスの男の蹴りが腹部に入ると、意識が途絶える。この場にはサングラスの男だけが立っていた。


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