第一章 眠れる少女

(1)


 廃墟が見渡す限り広がっていた。


 かつては多くの人々がここで暮らしていたのだろうが、今は姿も形も無く、建物などは瓦礫となり、ほとんど崩れ去っている。


 そんな中をひとり彷徨う青年がいた。

 青いバンダナを額に巻いて、片手には携帯情報端末機を持っていた。ディスプレイに映る地図と周囲の状況を照らし合わせながら、何かを探していた。


「確かこの辺りが、研究所らしき建物があった場所なんだが……」


 目に映るのは瓦礫の山。

 バンダナの青年は、ふーと息を吐くと、ベルトにかけていた“砲銃(ガレオ)”を手にとった。

 “砲銃(ガレオ)”とは、口径が十センチもある、携帯が容易な小型大砲とも呼ばれる銃。

 その砲銃の銃口を瓦礫の山へと向けて、引鉄(トリガー)を引く。


―――ズッガーン!


 耳の鼓膜を破けそうな激しい音が鳴り、放たれた弾丸が瓦礫の山へと直撃した。すると、けたたましい音が響く共に大きな爆発を起こして、粉塵が舞い上がった。


 しばらくして粉塵が晴れると瓦礫の山は消えており、地面がさらけ出されていた。すると、青年はガックリと肩を落とした。


「何も無いのかよ……。あの情報屋の情報はアテにならねーな。しかし、こういった研究施設には、地下とかシェルターがあるはずなんだけどな。まぁ、既に荒らされている率は高いよな……」


 ぶつくさと独り言を呟きつつ、転がっている瓦礫の破片を蹴っ飛ばした。

 転がっていく破片が何かにぶつかって音が反響する。そして、遠くへと落ちていくような音に変わった。


 音の変化に青年は気に留めて、蹴っ飛ばした破片の方向へと走りだす。

 自分が蹴っ飛ばした破片の行方を探していると、地面に小さな穴が空いているのを見つけた。


「これは……」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る