第52話

「鈴野も勉強ができないとか?」


「あ、はい…苦手で、宿題よく見せてました」


「彼には学校にしっかり行って、勉強するようお伝え下さい」


「…はい」


「楓さんは、とても冷静で優秀です。それに、とても美しく品があるので、誰でも話しやすい」


「そ、そんなことないです」


「雪見のような人間が行くと、すぐに不審がられてしまうんです」


「それは、なんとなく、わかります」


「もちろん、報酬も頂く仕事なんですよ?やってみませんか?」


「私に、できるんですか?」


「もちろん。楓さんが必要です」


「…ありがとうございます。よろしくお願いします」


そんなわけで、私はアルバイトをはじめた。

家のコンビニのアルバイトと、雪見さんの付き添いのアルバイトの掛け持ち。


「えー、楓さん、今日パーカーすか?」


「なんですか?文句あります?」


「いや、ちょっと、人の家行くのにその服は、ねぇ」


「なんですか」


「いや黄色とか、派手じゃん?」


「雪見さんは、秋でもまだそんなうっすい服なんですよね?その方が変ですよ」


「いや、これは作務衣っつーやつ!寺でもらったやつだから間違いねぇ」


「そんなわけないです。ちゃんと生地が秋冬用のものがあるはずですよ?」


「は?知らない」


「えー、ずっとそんな薄着?」


「そういや、そうかな」


「持ってないんですか?」


「いやーわかんね。服とか」


「はぁ、わかんないのになんで黄色はだめなんですか?」


「なんか、ヤンキーっぽい?」


「それ、雪見さんですから」


「はぁ?俺のどこが?」


「全部ですけど」


私は普通の高校生ではなくなったけど、他の居心地良い居場所を知ってしまった。

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普通じゃない私だけど えいみ @fukuharaeimi

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