第50話

「どうぞ、座ってて下さい」


どこかの畳の部屋に案内されて、座っている。天野さんは住職を呼ぶそうだ。いや、私が今日ここに本当にやってくるのかもわからないのに、予定を空けてて下さるものなのだろうか?


「楓さん、呼びました」


「あ、こんにち…」


見たことある…この、ツルツル頭の人。

すーっと部屋に入ってきた。


「雪見。仕事に行く時間だろう」


「あ、はい。あ、茶とかは」


「必要ない」


「じゃ…」


取り残された。


「あなたは、私のことを覚えていますか?」


「はい。子供の頃…病院に入院してる時…」


「そうです」


「お坊さんがお花くれて…なんでか私も元気になって退院できて…」


「はい」


「どうしてかなって、思ってて」


「私の気を分けたんですよ」


「…え」


「消耗してたので」


「そう、なんですか?」


「はい」


「どうして、病院に?」


「とある方から頼まれてたついでです。たまたま近くの病室から気を感じたので」


「…ありがとうございました」


「いえ」


「どうして、今まで…私と会ってもらえなかったんですか?」

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