第48話

「えー、サボるとか普通だけど」


「私の思ってた、普通と違う」


「楓さんの普通って結構ハードル高いっすね〜」


「それなら、私、楽勝かもしれない。だって、さぼったりしないから。苦じゃないから」


「俺のことバカにした〜」


「天野さん。そんなにゴロゴロしてたら、筋トレできませんよ?」


「うお、座ってる」


片手を少し動かすだけで、できた。


「私、なんでもできますよ?」


「え」


もっと、複雑なこともできる。


「なに…これ」


「人がいなかったからやってみました。私の持ってきたジュースをバックから出しました」


「まじ?俺の後ろに置いてるバックから?」


「はい」


蓋のないバックだから、容易に取り出せる。


「すげぇー」


ペットボトルを持って天野さんは感心している。


「こんなの、普通です。簡単すぎ」


「いやぁ、すごい。楓さんの普通すげー」


「結構ハードル高い普通なんですよ」


私の普通は、側から見たら普通じゃないかもしれない。でも、これが私にとって普通で、日常なんだ。


「もっと複雑なこともできるんですよ?」


「まじすかー!金とか手から出せますか?」


「私の能力ぜんっぜんわかってない!」


「いて!」


持っていたペットボトルのキャップ部分の方で、頬を突いた。


「物がないとできません。お金ない人からは無理です」


「うわ、ひでー!」



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