第27話

「あれ、…なんだここ」


「天野さん、ずっと寝てましたよ」


「え、…あ!あぁそうだった。てか何時?やば、帰る!」


慌てて出ていく天野さん。お寺の人なのに、別に普通の人みたい…


普通?


普通の人は、夢なんか入れない。


普通じゃない。…だけど


「伊織くん」


「なに?」


料理してた伊織くん。伊織くんだって変なものが見える。それに無表情で普通じゃない。私もそう。人と違う能力がある。


「カエさん?」


「私、ちょっとコンビニ行くね」


「え、うん…」


走っていけばすぐだ。お父さん、レジ入ってる?それとも休憩?


「こんばんは、お父さんは?」


「あー休憩っすよー」


「ありがとうございます」


バタバタして、休憩室へ入る。お父さんは、新聞見てる。


「お父さん!」


「…ん?カエ?どうした」


「お父さんごめんね…」


私より大きな体格。しっかりしてる。


「カエ?」


「もう、危ないことしないから…お父さんのこと大好きだからね。私、普通じゃないけど、お父さんは、愛してくれる?」


「何言ってるんだ楓は」


ぎゅーっと抱きしめられた。


「お父さんは、楓のお父さんだよ?愛してるに決まってる。だから、いつでも、お父さん、助けてあげるから」


「…ありがとう」


涙がたくさん出てきた。あの日を思い出す。


楓!やりなさい!ほら、いつもやってるでしょ!


嫌!やりたくない!


私の子供なんだから、私の言うこと聞きなさい!


助けて!お父さん!


あいつはお父さんじゃないって言ってるでしょ!お金払ってもらってるだけ。


お父さん!


…悪い子には、意地でもやってもらわないとね。ほら、超能力見せなさいよ。


助けて!


お願い、気づいて…お父さん…


「なにしてるんだ!」


お父さんが、私のために来てくれた。やっぱり、私のお父さんだよ。嘘じゃない。



「楓、怖いことがあったのかい?」


「ううん。お父さんに言いたいことあって。私、学校辞めたい」


「そうかそうか」


それだけだった。私が世間体を気にしすぎていた。


「お父さん、私、お寺のお坊さんと話したんだよ。そしたら、私の能力はずっと一緒なんだって」


「そうか」


「お父さんは怖くない?」


「いや?赤ちゃんの時から使ってたからね」


「そっか…そうなんだ」


お父さんは、ずっと見てくれてたんだ。私の意識するよりももっと前から。


「楓、ご飯はどうした?」


「伊織くんが作ってた」


「そうか。一緒に食べたらいいよ」


「うん」

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