第26話

「話してくれてありがとうございます。たくさん蓄積してたから…今日は、一旦休憩…」


え、あれ…天野さん寝ちゃった。さっきまでどこにいたの?私は今…ソファーに座ってる。

時計を見たら、そんなに時間は経ってない。あれはなんだったんだろ?あの空間…

それに、天野さんに暴言とか…でも、認めてもらえた気がした。私を、ちゃんと楓として認識してくれていた。

ぼーっとしてたら、伊織くんが帰ってきた。


「え…天野さんいるってこと?」


玄関から声がした。天野さんの下駄があるから。


「何この人、寝てる?」


「伊織くん、私やっぱり学校辞める」


それは、無意識に言っていた。


「…うん、わかった」


伊織くんは、すんなり受け止めた。


「それから、私の、お父さんは本当のお父さんじゃない…」


「うん、そっか」


それも、受け止めてくれるの?


「…私が負のエネルギーを集めてたの。りこじゃなくて、私なの…自分で…」


伊織くんに抱きしめられた。


「そっか、そうだったのか…。わからなくて、ごめん」


「全部集めてた…あの先輩は自殺しようとしてたの。私が全部、エネルギーを取って…」


「カエさん、気がつかなくてごめん」


「…私、消えたかった…」


「消えないで。俺のために」


「もう、疲れたよ…」


「カエさん、ゆっくり家で休んで大丈夫だよ。俺もいるし、お父さんもいる。俺はもう縁切られてるしここ出て行かないよ」


「…え?」


どういうこと…?


「後継者は姉。俺はいらないから、出て行けって。カエさん、だから、ここに一緒にいるよ」


「辛くないの…?いらないって言われて」


「全然。うんざりしてたから。だから、カエさん、消えないで。俺はカエさんが必要だよ」


「伊織くん、ごめんなさい、迷惑ばっかり…」


「気にしなくていいよ。カエさんと一緒に過ごせることが俺は、すごい嬉しいから」


伊織くんは、私を嫌うことないんだろうか。私は最初嫌ってるような態度だったのに。


「カエさん。大好きだよ」


気持ちが、少しずつ落ち着いてきた。

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