第23話

「夢の中でーす!というか心の中というか?」


天野さんが陽気に喋る。ぼんやりとした空間にいる。


「夢、ですか?」


「はい。あのー、実は、最初からわかってました」


「え?」


「あなたが、負のエネルギーを引き寄せてます」


「…私?」


「はい。でも、悠星ゆうせいさんには対応できなかったみたいです。すみません。年齢的なものもあるらしいのですが、うーん、なんかやっぱりほっとけなくて」


「…いったいなんのことですか?」


「楓さんは、誰かが傷ついたりしたりするのを嫌ってますよね。それに、自分に嘘ついて、いつも、誰かのためになるよ…」


「別にそんなことはないです」


「誰かを感情的に怒ったりもしない」


「違う」


「自分を抑えてる」


「違います」


「人と違う自分が嫌いですよね。あわよくば、死にたい」


「そんなこと、思ってない」


「なら、どうして負のエネルギーを集めるんでしょう。それは、楓さんがもう、辛くてたまらないから」


天野さんにまっすぐ見られた。


「辛くないです。だって、これから絶対、前よりも楽しくなるはずなんです」


「楓さんは、嘘つきだ」


「違う、嘘なんてついてない」

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