第14話

ぽと。


ナイフが落ちた。


先生は前に倒れた。


着物…


「この方は知り合いでしょうか」


カエさんも私も呆気にとられた。立ち上がりかけてた膝が言うこと聞かなくて、私だけ再び椅子に座る。


「さっちゃん、怪我は?」


「…う」


思わず泣き出してしまった。


「大丈夫ですか?」


零はすぐさま私に駆けつけてくれた。抱きしめられた。


「あの、カエさんというのはあなたでしょうか?」


「…はい。逢坂さんのお知り合いでしょうか?」


カエさんは、こんな時なのに冷静だ。


「彼氏です」


「…あ、なるほど。そうなんですね」


「この人は前の担任の先生なんです。でも、逢坂さんに乱暴しようとして」


「それはいけませんね。警察に届けましょう」


零は携帯を取り出して連絡している。先生は気絶してる?


「さっちゃん、もう大丈夫ですよ。みなさんはお怪我はないですか?」


「私は大丈夫ですが…」


あ。鈴野くんが倒れたまま。


「俺は、平気です…助けてくださりありがとうございました」


「いえ…」


ふわ、っと零に抱きかかえられた。


「ちょっ、な、なにするの」


「タクシーで帰りますか?」


「待って!カエさんたちが…」


「逢坂さん。ごめんね。怖い思いしたね」


「カエさんのせいじゃない!」


「また…次の機会だね」


「え!もちろん!嬉しい!」


「さっちゃん、タクシー呼びますよ?」


「…零は一緒に乗ったらだめだよ?」


「はい。すみませんが、取り調べが必要と言われたら、今日は無理だとお伝えください」


「わかりました」


カエさん、すごく冷静すぎる。怖いとか、ないのかな?

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