長谷川祐樹3
入学してからちょうど一週間。
俺たちの学校は、放課後すごい熱気に包まれていた。
各部活が新入生を勧誘しているのだ。
今日から三週間は部活動の仮入部期間で、ほとんどの部活はこうして放課後に宣伝を行い、新入生を集めるのに必死だった。
「おい、どうせ今日も暇だろ。仮入部、行くぞ」
クラスが解散になると、珍しく大翔から声をかけられた。
相変わらずの口調だが、自ら誘ってくるということは何か目当ての部活があるのだろう。
適当に返事をしながら慌てて帰りの支度を済ませ、大翔についていった。
何の部活かは聞いていなかったが、大翔が興味を持つということは何か理由があるのだろうと思って、俺はおとなしくついていった。
もともとやることもなかったので、ちょうど良い。
そんなことを考えているうちに大翔が急に立ち止まったので見上げると、目の前の部屋のドアには軽音楽部と書いてあった。
なるほど。
大翔はバンドに興味があったのか。
愛想のない大翔が少しは人間らしい感覚を持っていたことに驚きながら、すでにドアを開けて中に入ろうとしていた大翔の背中に声をかけた。
「大翔ってバンドとか興味あったんだね。もっと早く言ってくれれば俺も少しは調べてきたのに」
「お前はそんなことに前に宿題を終わらせろ」
毒舌を吐いているその声はどこか嬉しそうだった。
もちろん、当時の俺は大翔がバンドのために西城高校に入ったことなんて知る由もなかったが。
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