長谷川祐樹

長谷川祐樹1



俺の周りには、常に人がいる。



昔から人が好きで、人に話しかける量もきっと人より多いのだろう。



物心がついたときには俺はいつもグループの中心にいて、クラスや学校が変わってもそれはいつも同じだった。



普通にしていれば自然と人が寄ってくるし、それが俺にとっての日常だ。



だから俺は非日常、つまり一人でいることが嫌いだった。



もちろん普通に生活していれば一人になることくらいはあると思う。



でも、やることはあればそれに集中して、気を紛らわせられる。



暇な時間。



それが俺は一番嫌いだ。



暇になると、考え事を始めてしまう。



それだけならまだ良いのだが、考え事の矛先は自然と自分のほうに向いていき、自己嫌悪のループが始まる。



みんながよく言う、”自分”というものが俺にないことくらいわかっている。



それでも、それを確かめたくないから、俺は人の中にいることを決めた。



中学生の時にそれを決めてから、俺は意識的に人の中にいるようになっていた。



だから、高校の入学式の時もそうだった。



近くにいたやつに声をかけて、少し無理やりにでも友達になる。



ただそれだけのはずだった。



きっと今まで通りの俺なら簡単なはずだ。



しかし、俺はどうやら、人選びを間違えたようだった。



「おい、勝手に人の宿題を見るな」



「少しくらい良いだろー。どうせ全部終わってるんだから」



「それが当たり前なんだ。返せ」



入学式の次の日。



一人一人の自己紹介なども終わり、今は昼休みだった。



五、六時間目は入学前の課題を集めると先生が言っていて、まだ終わってなかった俺は大急ぎで友達、大翔の宿題を写しているところだ。



今までの友達に比べて、大翔はずいぶんと冷たい、というか愛想のない奴だ。



人がこんなに焦って、大変な状況だというのにこんな時まで宿題は自分でやれとか言ってくるなんて。



でも、なんだかんだ言って手伝ってくれるし、根は良い奴だと信じている。



まぁ、まだ会ってから二日目だというのに早速素でかかわってくるやつもなかなかいないとは思うが。



でもきっと裏表の激しい奴より良いだろう。



そして、俺には一つ変化があった。



世間でよく言うグループ的なものに入っていない。



まだチャンスはあるし、そもそもまだほとんどグループができてないのだが、それとは別に、俺はグループに入らなくても良いかと思いつつもあった。



というのも、まだ直感でしかないが、大翔といるのは大勢の人の中にいるのより楽で、無駄に気を遣わずに済んでいた。



だから、俺はとりあえず自らグループに入って人とかかわる気はなかった。



といっても、こんなことを思ったのは初めてだし、いきなりの選択に不安は残るため、決定したわけではなかったが。



別に人と関わるのに遅い早いもないし、今好きな方を選べばいいや。



そんなことを考えながら宿題を写していたら、予鈴が鳴って、休み時間の終わりが告げられた。

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