相川大翔8
そこからは、勉強漬けの日々が始まった。
志望校が確定して、家族だけでなく学校にも公表してしまったとなると、不登校のくせに高校に落ちるということにはなりたくなくて、勉強しないという選択肢は自然と絶たれていた。
だが、そんなことは話す前に覚悟していた。
一つ幸いだったことは、バンドのことを母さんに話さずに済んだということだった。
話したくないわけではないし、高校に受かって部活に入るときには話さなければならないことはわかっている。
しかし、今はまだキーボードもほとんど弾けないのに気が早すぎる。
そんなことをしているうちに、母さんに受験のことを話してから四か月と少し経ち、俺の人生を決める日が訪れた。
受験当日。
ちなみに、俺は第一志望以外にも何校か受験する予定ではあるが、第一志望が一番最初の日程だった。
まさか本命の最難関が最初に来るとは。
俺はこれまで、キーボードも封印して勉強に励んだ。学校に行っていない分時間だけはあるので、成績もそれなりに上がった。
それでも、最難関の西条高校に受かるかどうかと言われると微妙で、受かる保証も自信もあまりなかった。
正直、諦めたくなることはこれまで何度もあった。
成績が伸びないときや、自分の生活に苦しんだ時。
そのたびに俺は、母さんやバンドの音楽に救われ、支えられてきた。
それに、俺が初めて自らやりたいと思ったことだからこそ、俺はここまで来ることができた。
学校やこれからのことなど、プレッシャーはたくさんあるが、俺は自分の味方になってくれる人や物の存在を知っていた。
だからこそ、合格したいと思うことができて、それはあきらめずに努力し続けるという行動に変わった。
朝、予定より少し早起きした俺は、そんな風にまどろみの中で今までのことを振り返っていた。
気合を入れ直してからベッドから起きてカーテンを開けると、そこには今までにないほどの青空が広がっていた。
しっかり朝食を食べて、着慣れているが少ししっかりしている服に身を包み、予定より少し早めの時間に俺は母さんの声を背中で感じながら家を出た。
受験会場に着くと、重く張り詰めた空気が俺に降りかかってきて、危うくそれだけで頭痛がしそうだった。
外の空気を吸いたくなる衝動を何とか抑えて席に座り参考書を開くとほかの人が見えなくなったので少し気が楽になった。
まさか人より勉強が好きになるなんて。
そんなふざけたことを思いながら、俺はほかの人と同じように、テスト開始まで最終確認を行っていた。
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