相川大翔4
ライブに行った日から、俺は変わった。
中学には相変わらず行っていないものの、コンビニなど、散歩程度には外に出るようになった。
キーボードの練習も始めた。
実は、俺はライブを見た日から一つ夢ができた。
バンドを組むこと
正直、具体的なことなど何一つ決まっていない。
それでも、あの人たちのようにステージで輝きたいと思ってしまった。
もしライブができたら、また今回のように新しい感情を知ることができるのではないか。
そんな予感がどこかでしていた。
まぁ、そんなことは俺にとって夢のまた夢でしかないのだが。
それでも何もやらないよりはましだと思いたい。
今までの、単調な日々にはもう戻りたくなかった。
それにこの感情に俺自身が目を背けたら、本当にすべてが終わってしまう気がした。
キーボードを始めた理由は、小さいころピアノを少し習っていたからというシンプルなものだ。
相変わらず臆病な性格の俺は、今更新しいことを一から始める気にはなれず、考えた結果キーボードに行き着いた。
と思って始めたのはよかったのだが、キーボードは決して簡単ではなかった。
ピアノをやっていたとはいえもう何年も前のことだし、ピアノとは違う部分ももちろんある。
そんなわけで、俺は毎日キーボードの練習をするようになった。
母さんはそんな俺を見て、不思議そうな、何か言いたげな顔をしていたが、結局何も言ってくることはなかった。
そして、俺がキーボードを始めてから変わったことがもう一つあった。
母さんがよく笑うようになったことだ。
別に、今までだって、俺が引きこもっていた時だって普通に笑っていたし、悲しんだり悩んだりするような素振りを俺に見せたことは一度もなかった。
しかし、普通に顔を合わせて話をしていると、今まで無理をしていたことは一目瞭然だった。
今更、俺の知らないところで母さんが無理をしていたことを知って胸が痛んだ。
ライブのおかげで良い方向に変われたと思うことはたくさんある。
それでも、俺は学校に行く気にだけはなれなかった。
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