第43話

 当然、王都に呼び出される。

 いきなりの欠席である。

 俺、泣くぞ。

 ラクエルにシェリルにミザリーにアンちゃんに。

 いつもの面々も一緒だ。

 というか……俺の関係者と同級生全員だ。

 凱旋パレードやるらしいよ。

 派手になったな……。

 で、前回みたいにおとりミッションがあるかと思ったら好待遇。

 本当に高位貴族待遇で迎えられた。

 馬車揺れないの。

 外に出るとき絨毯敷いてくれるの。


「お姫様みたいだねー」


 ってラクエルがニコニコしてるの。

 ……そのドレス似合うな。

 本当に前回とは違う待遇だった。

 で、王都に着くと王様が出迎えた。

 巨大な馬車で高いところから見下ろす。

 パレード用のものなのだろう。


「勇者よ! よくぞ参られた!!! リック卿、そなたの忠信、そなた知性、武勇に感謝する!!!」


「はッ!!!」


 と馬車から出てひざまずいた。

 だけどリック卿って言われてもなあ。

 あと武勇はない。

 だけどそういう言葉を選んだ理由はすぐにわかった。


【勇者まんじゅう】


【勇者弁当】


【勇者お守り】


 もちろん無許可だ。

 勝手に商品化されてる。


「なにこれ?」


「まんじゅうほしい!!!」


「ラクエルそうじゃない!」


 すると王様がニヤニヤする。

 むかつくわー!!!


「どうだ? 王の苦しみがわかったか? これぞ民よ。我を独裁者と呼ぶものがいる。だが実際はこれだ。彼らを支配などできると思うかね?」


「これに関しては全面同意します」


「ふふふ。だがお前には感謝している。これで国は平和に近づいた」


「どういうこと……ですか?」


「なあに、こちらにはラクエルとお前がいる。ドラゴンを殺せば呪われる。その呪いを解除できるのはお前たちだけだ。誰も呪われたくないし、お前らを絶対に殺さないなんてできるはずもない。軍事的な侵略は手段から消えた。しばらくはな」


 この自分の呪いすら使い倒す強メンタルよ。

 強すぎる。


「それに俺も、もうしばらく生きてられそうだ。今のうちに政治基盤を我が子に渡す時間が稼げた。ラクエルの怒りを買うリスクを負ってでも勇者を使い倒す選択をしなくてすみそうだ」


 やはりだ。

 アンあたりと結婚させるつもりだったな。

 このおっさん。

 やっぱり本気だったのか!


「あ、そうだ。リック、お前、というかマクレガー家、今日から伯爵な」


「……冗談でしょ。パワハラされるじゃん!!!」


 怖い!!!

 上級貴族の陰湿さ。マジで怖い。

 お友だちになれる気がしない。


「だいたい領地どうするのよ? うち領地から動けないよ。学校あるし」


「ああ、公爵とその一派から巻き上げた土地な。お前ん家にやるわ」


 いらねええええええええええッ!!!

 血まみれ&全方面に恨み買う土地。

 絶対いらねええええええええッ!!!

 っていうか、超絶大貴族じゃねえか!!!

 おいふざけんな!!!


「代官置いてやるから。金だけ送るわ」


「それって他の貴族の恨み妬みはこちらで処理しろってことぉ?」


「勘のいいガキだな。お前さあ、もうちょっとさあ、学校ではじけてこいよ」


「学校休む原因作ったの王様……の先祖か」


「それは謝るわ。あとなお前、俺と五分の兄弟な」


「年離れすぎだろ」


「いいんだよ。普通なら泣いて喜ぶところだぞ」


「五分って王族待遇だけど」


「あのなあ、これでも感謝してるんだ。娘の命を助けてもらったんだ、お前には、お前とラクエルにはどんなに感謝してもしたりないよ」


「でもさあ、他の貴族がさあ……」


 父さんが針のむしろとか勘弁してほしい。


「安心しろ。王家に忠誠を誓う派閥が面倒見る」


 そこまで言われたらしかたない。


「わかりました。父には?」


「すでに打診した。自分より出来のいい息子に聞けってさ」


 それじゃしかたない。


「話はまとまったな。じゃあ発表するぞ!!!」


「リック・マクレガー卿。伯爵位を授ける!」


 わーっと場がわいた。

 物が飛び、市民が踊り出す。

 勇者ってこんなんだっけ?

 ラクエルの部屋だけで完結してるじゃん。

 さて凱旋が終わり、実務。

 王様の治療が行われる。

 アンちゃんと同じですぐに終わる。

 ガルギエ伯爵を中心とする魔道士の集団が確認して、次に宮廷医師が診察する。


「呪いの消滅を確認しました」


 ガルギエ伯爵が宣言した。

 魔道士たちがわいた。


「や、やったぞ!!! 祖父のころからの大願がついに……」


「せ、先生! 僕は、もう、うれしくて、うれしくて……」


 涙まで流している。

 王様は、一回りマッチョになった王様は魔道士や医師をいたわる。


「諸君らのおかげで我はここまで生き延びることができた。諸君らの忠誠心に感謝する!」


 服のボタンが飛んだ。

 筋肉で。

 もうやだこの王様。

 呪いを素の体力だけで乗り切ったのね!!!

 なんで俺の周囲って化け物ぞろいなんだろうか?

 またもや宮殿の部屋に通される。

 今回は親戚待遇。

 前回よりもグレードが上の部屋に通される。

 ベッドが広い。

 それなのにラクエルは俺にくっついて寝てる。


「ま、いいか」


 こうして俺の古代魔法騒ぎは終わりを迎えたわけである。

 たぶんね。


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明日休みます。

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