第40話
全員を倒した。
すると倒した全員に囲まれる。
試合に参加してなかった平民の子たちまで俺を囲んでいた。
やっべ、リンチか!?
リンチがはじまるのか!?
すると最後に倒したギルバートが俺の前に立つ。
「勝者を讃えよう!!!」
なぜかみんなで俺を胴上げする。
なに!?
なんなの!?
何回か胴上げされて解放される。
俺が目を丸くして呆けてるとギルバートが両手で肩を叩いた。
「さすが勇者だ! これだけの人数を一方的に倒すなんて! 君はすごいやつだ!!!」
「ああ、うん」
他の生徒も俺を褒める。
マッチョな子が興奮したように言った。
「まったく……君はすごいよ! 歯が立たなかった! 勝負にすらならないなんてはじめてだ!!!」
なんか喜んでる。
「あはは。なんで喜んでるんだって? そりゃ君が強すぎるからだ! 僕は自分の強さが頭打ちだと思ってた。でも君を見て方向性が定まった。僕はまだまだ強くなれる!」
そういう喜びか。
これは理解できる。
「おいおい、リックのマネすんなよ。こいつの器用さは異常だからな。おい、リックこっち来い」
カール兄ちゃんに呼ばれた。
近くに行くと棍を渡される。
「これからリックの攻略法を教える」
「嘘でしょ! いきなり種明かし!?」
「そうだ。ほら、かかって来い!」
「ふえーん!」
俺は情けない声を出してからスイッチを切り替える。
カール兄ちゃん相手に手を抜いたら完膚なきものまで叩きつぶされる!
「うおおおおおおおおおおお!」
棍で上から一撃。
棍を剣で軽くなでられた。
すると攻撃の方向性を変えられ、簡単にいなされる。
「いいか、リックは体が小さい。こういう相手は骨格の筋肉を総動員して攻撃してくる。つまりいなせば崩れる」
「いきなりの致命的な種明かし!!!」
「うるせー! 諸君らは攻撃を真正面から受けすぎだ。盾や防具で受けていいもの。いけないものを選別しろ」
突き。突き。突き!!!
連続で突きを繰り出す。
これはフェイント。そして強打!!!
踏み込んで体の全パーツを駆使して強烈な……。
ぶんっと天地がひっくり返った。
投げられた!?
「つまりこういうことだ。はい1死に」
こんっと軽く頭を叩かれる。
やばい。
勝てる気がしない。
「リック、魔法使え」
「言われなくても!!!」
ブレスは時間がかかりすぎる。
だから氷!
と思った瞬間、カール兄ちゃんが地面を蹴る。
ああ、なんて合理的なんだろうか。
土だった。
それが俺の目に当たる。
目つぶしだ。
「魔道士と戦うときはこうやって詠唱できないようにしろ! そして……」
目が見えるようになる前に横薙ぎが来た。
俺は勘でかわす。
だが実際に来たのは蹴りだった。
すてーんと倒れて頭ぽこん。
「はい、2死に」
いいようにされてる!!!
これはまずい!
「いいか、魔道士との戦いは力で押せ。特にこういう万能型は勘が鋭いから、目つぶししても避けようとする。だから避けられないように速く、そして力強く潰せ」
「……はいギブアップ」
もう勝てる気がしない。
ギブアップして許してもらおう。
「ダメだ。次はシーフも解禁」
はいはい。やりますよ~。
とやる気なく見せかけて!!!
「オラァ!!!」
隠し持っていたナイフを投げる。
手段など選んでられない!
だけど全部手で叩き落とされる。
嘘だろ!!!
「と、このように、シーフは対人戦においてバカ強い。だから我ら騎士がやることは相手に攻撃の隙を与えないことだ。つまりこういうことだ!」
剣が来るかと思ったら、拳だった。
俺はあわてて頭部を抱えてブロッキング。
だがカール兄ちゃんの拳を防御しきれるわけがない。
体が浮く。
「いいか、間合いを取らせるな」
空中でつかまれ、片手で地面に叩きつけられる。
じゃあ、体術だ。
足を絡めてテイクダウン。
「お、モンクの技法か。だがスマンな。リャン師範には俺も稽古つけてもらってるんだ」
俺の関節技はヒザを落とされ潰された。
最後に剣で尻をポコン。
「はい死に。いいか諸君。君らが騎士である限り、モンクと戦うことは少ないだろう。彼らはモンスターと不正義を倒すために拳を振るう。だが万が一戦うことになったら? 呼吸を邪魔しろ。彼らは鍛えた体を気と呼ばれる呼吸法で強化してくる。リック、ヒザをどけてやるから気を使って俺から逃げてみろ」
呼吸法で体を強化する。
片手で地面をつかみ、そのままカール兄ちゃんごと体を持ち上げ片手で倒立する。
「おおおおおおおおおお!!!」
なぜかみんなが感嘆した。
「わかるな。これがモンクだ。よっと、いいぞリック」
カール兄ちゃんがどいてくれる。
俺も立ち上がる。
「モンクはリックより上の段階になると指一本で倒立できる。どういうことかわかるな。素手で鎧を引きちぎられる」
「……え?」
みんなが間抜けな声を出した。
「だから基本的にはモンクと戦うな。もし戦うなら呼吸を潰せ……と、私の講義はこのような内容になっている。質問は?」
「リックに勝てるようになりますか?」
ギルバートが手を上げた。
「今のリックなら。リックも成長するから未来はわからない。現状でもコイツはドラゴンの固有魔法まで使えるからな」
「ほぼドラゴンは伊達じゃないと……」
「だから集団戦だ。ちゃんとした作戦があれば勝てる相手だ。今はまだな」
なんだか……みんながやる気になっている。
熱意の炎が見えるようだ。
「平民で今から稽古でも大丈夫ですか!」
なぜかジェイクが恐ろしい熱量で質問してきた。
「もちろんだ。努力さえすれば可能だ」
「がんばります!!!」
……えー、ちょっと待って。
打倒俺みたいな流れになってない?
俺も生徒側なんだけど。
「打倒勇者!!!」
なぜかカール兄ちゃんが拳を上げる。
するとみんなも答える。
「打倒勇者! 打倒勇者! 打倒勇者! 打倒勇者! 打倒勇者!」
ノリよすぎじゃない? 君ら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます