帰省
夢を見た。
天の川の川岸を走る銀河鉄道の夢。
「卒業おめでとう。ユイ。」
お母さんの声に似た少女が祝ってくれた。
「ありがとうございます…。」
「私のことはレイでいいわよ。ユイ。」
少女はレイと言った。
お母さんと同じ名前。
「レイさん。ありがとうございます。」
「レイでいいわよ。ユイ。」
それを最後に霧の中に消えた。
移動中の車で目を覚ます。
「おはよう。お姉ちゃん。」
「うぐぅ。」
乃亜の抱きつき攻撃。
これまでの分のが一気にのしかかってきた。
「乃亜そのくらいにしておけ。」
「ぶぅー。」
兄のおかげでなんとか解放された。
「おはよう。ユイ。」
「兄よ。おはよう。」
トンネルを抜けて日の光が車内を満たす。
山々と海に囲まれた東北の地。
僕のお母さん。
《岩波レイ》の生まれ故郷。
《岩波市》。
風力発電の風車が並ぶ山々。
そこにひとつも風車のない山のところに一つの屋敷がある。
お母さんの家であり、今のお母さんの実家でもある。
「おかえりなさい。皆々様。」
屋敷の家政婦さんたちが出迎える。
代々この家に使えてきた人達で、僕も幼い頃からお世話になってる。
「荷物はこちらに。」
「お願いします。」
「ユイ様。これは大きくなられましたね。」
「お陰様で。」
「立ち姿もレイ様にそっくりで……。」
「ありがとう。」
感極まった泣いているのを僕は抱きしめた。
家政婦さんたちに紹介された道の駅。
かつては旧国鉄の駅舎だったのだが、時代と共に廃れ。
今では住民の要望もあって道の駅として改装されている。
僕はその裏手側。
観光用に駅舎の名残を残した駅と線路がある。
線路の向こうには川が流れていて、鳥を始めとする動物たちの憩いの場になっている。
…………。
線路の向こう。川の上にレイと同じ姿の少女がいた。
「……っ。」
なにかを避けるように鳥が羽ばたき、動物たちは山奥へ散っていった。
「今のは一体…?。」
なにかに引っ張られて休憩用の木製の長椅子に向かう。
《銀河鉄道:天の川線【まほろば】》。
と書かれた古い乗車パスが置いてあった。
なんでこんなものがあるのだろうか?。
誰かの落し物だろうかと名前がないか探した。
《名前:ユイ》。
どうやら落し主は私らしい。
確証はないけど直感がそう言っている。
「ユイ。そろそろ帰るよ。」
乃亜に呼ばれて、微かに残る違和感を置いて僕は家族の元へ帰った。
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