第7話

英語を上達するには日本語を教えるべし?


 真奈の属した言語学校は日本語に慣れておらず、スペイン語やフランス語の教え方をそのまま無理矢理日本語にも当てはめようとするため、なんと日本語のまったく分からないアメリカ人ビジネスマンたちを前にすべて日本語で話しかけて、英語は一切禁止という方法を強いられてしまったから大変だ。


 ぽかんと口を開けたままの生徒たちに構わず、先生である真奈はどんどん日本語で話しかけていく。


「ワタシハマナデス。アナタハジェームスデス。アナタハジェームスデスカ?」

 といった具合である。


「コレハペンデス」

「アレハペンデハアリマセン」


 そんな日本語を朝から晩まで言い続けたものだから、真奈の頭の中はおかしくなりそうだった。


 時には、

「ワタシハトビマス!」 

 と言いながら、教室の中でピョンピョンとウサギのように何度も飛び跳ねることもした。


ハァ、ハァと息が切れるまで飛び跳ねている真奈を黙って見ているだけだったアメリカ人たちも叫び始める!


「あなたはジャンプしていますね!」

「ハイ、ハイ、そうです!」


 なんということはないアメリカ人を相手にジェスチャーをやっているようなものだった。


 疲れ果てた先生と生徒は、休み時間には思いっきり英語で話をした。


 英語で何か言いたくてうずうずしていたアメリカ人生徒たちは今こそとばかりに、まるで機関銃のように早口でペラペラと英語をまくし立てた。それを聞き逃すまいと、今度は真奈の方が必死で聞き取りをしなければならなかった。


 そんなこんなで、生徒たちの日本語よりも真奈の英語の方がうんと上達したものだった。


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