乱入


 ダンジョンの中は普通に洞窟タイプで、かつスライムもちょいちょい現れていた。


「カロナちゃん! スライムだよ、スライム! さぁゴブリンに打ち付けて!」

「了解ですわアカリ先輩! どっせーーい☆」


 ミスリル傘でスライムをパコーンと打ち、通りすがりのゴブリンの頭を吹っ飛ばした。ヘッドショット、ワンキルである。


[俺氏0436]:”ナイスヘッドショット!”

[@tam323]:”ゴブリンの魂をあの世にホールインワン!”

[じょあ坊]:”スライムも出てくるとかお嬢のためのダンジョンと言わざるを得ない”

[軽有]:”まぁスライムって割と多くのダンジョンで採用されてるからな”


「ナイスショット! さすがカロナちゃん、傘ゴルフでバズッただけのことはあるね! 配信映えもいいよ!」

「ありがとうございますわアカリ先輩。しかし、ゴブリンの洞窟なのにスライムも居ますのね?」

「うん! 実はあらかじめ軽く下見をして、スライムが居るところを選んだの!」

「相変わらずアカリはそういうところマメね」

「……昨日の夜コソコソログインしてたのはそういうことか」


[アカリンゴ5]:”お? 同棲匂わせかー?”

[コムーンA]:”ソラ様昨日の夜もギルドホームのリビングでゲーム配信してて、後ろに映ってたからその事ね”

[@smallwind]:”なるほど。ある意味ギルドホームで同棲……アリだな!”


「匂わせ……そういうのもあるのか。勉強になりますわー」

「コラ、アカリンゴ達! 後輩に変なこと教えないの!!」

「カロナさんもギルドホームにいつでも遊びに来てくださいね」

「はいですわユキ先輩!」


 そんなわけで、先輩達がゴブリンを倒すのを見学したり、スライムが居ればカロナも援護射撃をしたり、後ろからきたゴブリンを普通に傘のフルスイングで倒したりと順調にダンジョンを攻略していく。


「ふぅっ! 順調順調。こんな安定したダンジョン攻略、デイリーこなす以外では初めてかもですわ!」


 なにより、後ろをあまり気にしなくていいのが良い。これがパーティープレイか、とカロナは今までソロばっかりだったもんなぁとしみじみ実感する。


「そうだねー、今日はカロナちゃんの紹介と歓迎で簡単なダンジョンだから」

「普段は配信映えを考えて、実力的にギリギリの場所を狙っているわ。私達もこれだけ安定しているのは久しぶりね」

「ああ。いつもだと場合によっては撤退することもあるからな」


 そう、星空プロダクションのパーティーは普段はもっと強敵と戦っている。

 カロナのデイリー配信のように、安定しすぎてて代わり映えが無い配信はただの雑談と変わりないからだ。そしてカロナのデイリーは淡々と作業するだけで雑談ですらないし。


 ダンジョン配信において、配信映えを考えると常に『挑み続ける』方が都合が良い。でなければ、視聴者も楽しめない、ただの作業配信になってしまう。(それはそれで一定の需要はあるが)

 挑み続けることで、自然と実力も上がり、より難しいダンジョンを攻略できるようになる。


 ダンジョン災害に対抗するための、ダンジョン配信の理想的な関係。星空プロダクションの配信スタイルは、まさにそれだった。



 と、またゴブリンが出てきたので、カロナが傘で打ち倒す。


「あら? 今のゴブリン、最初から腕を怪我してましたわね?」

「ホントだ。他のパーティーの打ち漏らしかな。奥の方にきてゴブリンも増えてきたし」

「ここはマルチダンジョンだからな、そういうこともある」


 ふぅん、とカロナが納得しかけた、その時だった。


「あれ? なんでこんなところに星プロの連中がいるの?」

「げ、黒川オセロ」


 黒髪に白のメッシュの入ったショートカットヘアのショタがひょこっと現れる。黒川オセロ――それは、星空プロダクションと因縁のあるニコノワールプロダクション所属の大型新人B-Caster。

 だが、そこに居たのは黒川オセロだけではなかった。


「待ちたまえ黒川君。私を置いていくんじゃないよ」


 凛とした、それでいてふてぶてしさを感じる女性の声。


「ああすみません。けど、見てくださいよ鴉羽からすばさん。星プロが居たんですよ」

「おやおや。これはこれは。ククッ、ウチのスカウトを断ったお嬢様までいるじゃあないか」


 そして、黒いポロシャツを着た、ゴルフクラブを持ったスタイルの良い女性アバターが黒川オセロの後に歩いて現れた。


「この方は……鴉羽からすばクロナ……!?」


 ――そう、それはニコノワールとの面談の際、黒井専務がカロナの転生先として見せた、プロゴルファーお嬢様アバターであった。




―――――――――――――――――――

(以下お知らせ)

相変わらずクッソ不定期申し訳ないのですわ……!

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