知っているの、カロナちゃんッ!?
そして、黒いポロシャツを着た、ゴルフクラブを持ったスタイルの良い女性アバターが黒川オセロの後に歩いて現れた。
「この方は……
「知っているの、カロナちゃんッ!?」
「ええ……っと……思わず名前言っちゃいましたけど、言っていいのかしら……? コンプラ的に」
[じょあ坊]:”お嬢、配慮できて偉い!”
[@tam323]:”苗字部分はオセロ君言ってたし大丈夫、かな?”
それはニコノワールプロダクションにスカウトの話を聞きに行った時の話である。こう見えて会社のコンプライアンスとかそのあたりをしっかり配慮できるのがカロナである。
ちら、と鴉羽クロナに目線をやると、クロナはにやりと笑んで頷いた。
「かまわんよ。君が知ることをすべて言って良い。私が許可しよう」
「えっ、良いんですの? 全部?」
「ああ。全部良いぞ。面談での事もな」
ホントにいいの? ともう一人のニコノワール所属のB-Caster、黒川オセロを見ると、肩をすくめて「まぁいいんじゃないですか? 鴉羽さんが良いって言ってますし」と肯定する。
「で、あれは一体誰なの? 教えてカロナちゃん!」
「えーっと、本当に言っていいのかしら……やっぱりアレかもなのでお耳を拝借……」
「ふむふむ……なるほど! ニコノワールに所属した場合に、転生先として用意されてたアバター、鴉羽クロナだったんだね!」
「全部言った!? ちょ、先輩!?」
[@FE_Sofiya]:”まじか、つまりこのお嬢様はお嬢だったのか!”
[くさしげ煉牙]:”もう一人の……私! ってコト!?”
[@smallwind]:”新人にアバターを使わせてるのか、誰かが転生したのか……?”
耳打ちした内容のアッサリの暴露に、カロナは慌ててアカリの口を塞ごうとするがもう遅い。既に事情は完全に配信に乗ってしまった。
お嬢様をしているカロナだが、その中の人は小市民。当然焦るのだが、アカリはニコッと笑顔で言う。
「カロナちゃん。あっちが言っていいって言ってるんだし、何かあっても私たちの責任にはならないよ、大丈夫!! 視聴者のみんなが証人だよっ!!」
[俺氏0436]:”えっ、俺ら?”
[@beruki]:”突然の証人に草www”
[アカリンゴゥ]:”おっと、ニコノワール相手だしな。いいぜアカリちゃん!”
[コムーン3]:”アーカイブでも言質残るから証拠十分ですわね”
「本当に大丈夫でして……ちょ、あの!?」
ニコノワールとゴタゴタするのに実は慣れているのか、先輩達の視聴者は手慣れた感じで了承している。
「なぁに、この私が許可を出しているのだから良いのだよ。丁度いい配信のアクセントだろう?」
「というか、とても偉そうだけどあなたってば新人さんじゃないの?」
「ククク、偉いのさ。なぜならわたくしはそこのお嬢様志望の一般人とは違い、本物のお嬢様だからねぇ! ニコノワールプロダクションにも結構な発言権をもっているのさ! このわたくしこそ、ゴルファーお嬢様、鴉羽クロナなのだからッ!!!」
そう言ってクロナはビシッとカロナを指さした。
「カロナちゃん! ここはしっかり言い返さないと!」
「え? え?」
「ほらほら! 言い返して!」
「えーっと……な、なるほど。ゴルファーお嬢様ですのね!」
「そうだよ鴉羽クロナ! ウチのカロナちゃんはスライムゴルフで右に出る者が居ないんだからねっ!!」
「え? アカリ先輩? 別にそこまでは言ってないですわよ?」
「ほう! よかろう。ゴルフで右に出る者が居ないと言われてしまっては、ゴルファーお嬢様であるわたくしは手袋を叩きつけざるを得ない。スライムゴルフで勝負しようじゃないか!!」
「いや私言ってな――」
「カロナちゃん! 受けて立とう! ねっ!!!」
[ゴゴゴアカリンゴ]:”アカリちゃん? 新人に決闘の強要はよくないですぞ?”
[ユキダママ]:”アカリちゃんニコノワール相手だと全力で突っ走るから……”
[オコムーン]:”がんばれ新人お嬢様! 相手の新人お嬢様に負けるなよ!”
[@huhum]:”リーダーが決闘を承諾したなら受けざるを得ない”
[胡蝶蘭]:”お嬢頑張ってとしか言えない……お嬢なら勝てる、と思いたい!”
[まりもヨウカン]:”相手の力量が未知数だからなぁ……さてさて?”
こうしてカロナの意思を半ば無視して、お嬢様同士のゴルフ対決が決まってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます