カロナは相談することにした


 カロナは相談することにした。

 もちろん今回のスカウトを受けている件は配信で話せない。コクヨウとセバスには相談してはいるが、こういう内容について秘書AIは明言を避ける傾向がある。

 あくまで、決めるのは自分。人間の判断なのだ。


 故に、相談相手は人間の方が良い。それも、信頼できる口の堅い人物だ。


「……というわけで、2つの箱からお誘いがかかっているのですわ」

「なるほど。それで私達ダンジョンブレイバーに相談にきたってわけね」


 カロナの相談できる相手。それは、当然のようにダンジョンブレイバーの面々しかいなかった。ヤマトとユウタ、サクラの3人に事情を話し、3人ならどちらを選ぶかを尋ねてみる。


「俺ならニコノワールだな」

「ああ。俺もそっちだ。やっぱ大手だしね」

「私もこの二択なら、ニコノワールかなぁ……転生はともかくだけど」


 意外! ニコノワール、圧倒的に人気!


「……そうなんですの?」

「ああ。実際、星空プロダクションには先があるのか怪しいしな」

「黒井専務はちょっと怪しいけどな。聞いた分では条件は普通だし……良くも悪くもない」

「将来性を考えるとどうしてもねぇ。大手は強いわよ。転生は微妙だけど、ファンはそこのところ分かるから実のとこついてくるって言うし……」


 うむむ、そうなのかしら? とカロナは心揺れる。


「とはいえ、星空プロダクションみたいな小さな箱であればエースを目指せる、というのもあるわね」


 サクラがそんな意見を出してきた。


「ニコノワールくらい大きな箱だとエース争いは層が厚いわ。一方星空プロダクションは3人でしょう? 同期が増えて倍の6人になったとしても、1パーティーでも収まるくらいでしょ。エース十分狙えるわよ」

「エース……そういうのもあるんですわね!」

「やっぱりダンジョン攻略がメインコンテンツであるBCDでは、エースチームに視聴者が集中するっていうのもあるわね!」


 ふむふむ、とサクラの話を聞いて頷くカロナ。

 サクラの意見は続いていたが、ヤマトが手を挙げて発言する。


「……だが、ニコノワールは転生先のデザインまで作ってたんだろう? これ、わりと本気でプロデュースしてくれる気があるってことじゃないか? お嬢様になりたいカロナ嬢の意見にも、実際合っているわけだし」

「や、ヤマト様のおっしゃる可能性も高いですわ……!? 確かに黒井専務の態度はアレでしたが……あ、オフレコですわよ!?」

「分かってる分かってる。カロナ嬢が俺達を信用して相談してくれているわけだからな」


 ヤマトの発言にそれもそうかも、と流されるカロナ。

 それを見てユウタはやれやれと口を開く。


「いっそどちらにも所属しない。個人勢のままのんびり続けるっていう手もあるよ? 別の企業からのスカウトがあるかもしれないし。ないかもしれないけど」

「ええっ!? そんな手が!?」

「どちらを選んでも角が立つのが嫌、っていうなら、それも手でしょ。それに、サクラやヤマトの意見にアッサリ流されちゃうあたり、意志の弱さが……ね?」

「うぐぅ!! ど、どうせ優柔不断ですわよぅ……」

「ああ、でも別に完全に悪いとは言ってないよ。一人で悩んで抜け出せなくなるより、誰かに相談できる方が遥かにいい。で、一番大事なところなんだけど……結局はカロナちゃんがどうしたいか、だよ」


 どちらにも所属しない。そんな選択肢があるのも見失っていた。目からうろこのカロナ。


「……私がどうしたいか……!」

「そ。どうしたい?」


 ユウタにうながされ、自分がどうしたいか。カロナは考える。



「……私、転生はしたくありませんわ! でも、いっぱい稼いでお嬢様になりたいんですの!!」

「稼ぐっていうなら、企業勢になるのかな? でも、ニコノワールは転生が条件だしねぇ」

「そうなると、星空プロダクションですわね……ありがとうございますわ、ユウタ様! おかげで心が決まりましたっ!」


 かくして、カロナは星空プロダクションへの所属を心に決めた。


―――――――――――――――――――――――――――――


「……ユウタが真面目に相談に応えてる……意外だな」

「ええ。ユウタこんな普通の事言えたんだ」

「2人とも? 俺の事なんだと思ってんの?」


(尚、私の方もちょっと忙しくて更新ペース遅めでごめんね!

 今月いっぱいはまず忙しそう……!)

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