第二のスカウト
「お嬢様。スカウトのメールが届いております」
メールチェックを任せていたコクヨウにそう言われて、カロナは「はて?」と首をかしげる。
「あら。星空プロダクションからメールですの?」
「いえ、違います。別の事務所です」
……!? とカロナは驚きに固まった。
コクヨウが提示したメールは、『企業からのお問い合わせ:ニコノワール』という件名であった。
「ま、まさかの! 私が選ぶ立場に!?」
「おめでとうございますお嬢様。ひっぱりだこですね」
「ほう! こりゃめでたい、赤飯を炊かないといけませんな! 戦場では基本レーションなのですが、めでたい時には日本製の赤飯缶がふるまわれたものでして」
「んもう! セバスったら! 恥ずかしいですわ! お赤飯だなんて!」
ぺしぺしとセバスを叩くカロナ。
「ほっほっほ、ではケーキにいたしましょうかお嬢様」
「ふふ、それでお願いしますわセバス。……しかし、選ぶということはどちらかを切り捨てるということ。悩ましくなりますわね……」
「しかし複数の企業に所属することはできませんぞ? 提携はできますが」
「お嬢様、とりあえずメールの内容を見てから考えるのはどうでしょうか?」
「コクヨウの言う通りですわね。見てみますわ」
早速メールの内容を確認してみると、その内容は概ね星空プロダクションの時と同じような文面であった。
「……これは、ニコノワール様の方とも会ってみないと何とも言えないやつですわね? で、ニコノワール様はどのような感じの企業様でして?」
「ええと。調べますので少しお待ちを」
と、コクヨウがネットの海を調べ始める。
「結構大きい箱のようですね。50人は所属しているようです」
「まぁ! 結構な大手じゃありませんの」
「……ふむ。お待ちくださいお嬢様、これは怪しいですぞ!!」
くわっとセバスの目が開く。
「星空プロダクションの時はそれほど反応しなかったのに、急にどうしたの?」
「勘でございます! なにせ名前にワール……『
「ノワール、つまり、黒ではなくて? 黒色は嫌いではありませんわよ? メイド服も執事服も黒ですし。落ち着いた色でしてよ。ねぇコクヨウ」
「はい。私はそこに親近感を感じますね、私も黒ですし」
と、コクヨウが頷く。
「ですが、一つ問題が見つかりました。星空プロダクションです」
「あら? 星空プロダクションがどうかしまして?」
「はいお嬢様。星空プロダクションが大手事務所と揉め事を起こしたという話がありましたよね? その相手が、こちらの『ニコノワール』なのです」
「まぁ! 偶然というのはありますのねぇ……」
しみじみと運命を噛みしめるカロナ。そういうことも、あるのだろうなとカロナは思う。
「……これ、どちらを選んでも角が立つやつではなくて?」
「そのようですな、お嬢様」
「ですね」
引き続き情報を集めます、とコクヨウは半透明のウィンドウに向き直った。
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(色々と書籍化作業とかとかもろもろでのんびり更新ですわー!)
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