星空プロダクション(5)

 一旦話を持ち帰ったカロナは、よく考えてみることにした。


「まさか私がスカウトされるだなんて、驚きですわねぇ……」


 ちなみに色々と契約条件が書かれている書類も預かった。もちろんBCD上なので紙と見せかけてデジタルデータなわけだが。


「これみるに、現状とほぼ変わらず所属だけ変わった上にお金が追加でもらえたりする感じなんですわよね。断る理由がほぼ無いですわ?」

「であれば、すぐにOKの返事をしてもよかったのではないですかな?」

「そこなんですわよ」


 セバスの発言にカロナはふぅと息を吐く。


「美味い話には、たいてい裏があるものですわ! なんかこう……なんかこうあるはずですわ!!」

「とても根拠のない漠然とした不安ですが、話は分かりました。私めらとしては特に否やはないのですが」

「今のところ悪い要素は殆どありませんからね」


 コクヨウも色々心配していたが、配信の指定も現在のペースより少ないし、ペナルティ等も事情を加味してあったりなかったり。全面的にカロナが悪くても『給与』の支払いが少なくなる程度だ。

 普段してない企画は許可を取る必要があるし、イメージを損ない過ぎる企画はやってはいけない。しかし、星空プロダクションから出された企画が無理となれば、拒否する権利もある。


 しいて言えば、「所属が『星空プロダクション』になる」という程度。


「うーん。というかお嬢様、私としては正直企業としてやっていけるのか、甚だ疑問なんです。これがBCDじゃなかったら赤字でしょうし。……実のところ、どうして企業勢としての認可が下り続けているのか不明なくらいですね」

「あら、そうですの?」


 言われてみれば確かに、企業というには非常に頼りない。ダンジョンブレイバーの方が規模が大きいと言えるかもしれない程に。……チャンネル登録者数は星空プロダクションの方が一回りも二回りも上だが。


「ほっほっほ、おそらくそれもあってお嬢様を誘っているのでしょうな。企業勢にはダンジョン攻略義務を守れるだけの戦力が求められますゆえ」

「ダンジョン攻略義務? そういうのもあるんですのねセバス」

「ええ。その点、お嬢様は先日、真化したダンジョンをその場で撃退した実績がありますな。即戦力である上に、ダンジョン攻略義務のノルマにも貢献できるといっていいでしょう」


 そう考えると、確かにカロナを雇うことで多少であれば赤字になっても雇うメリットは十分あるといえる。むしろそれなら企業勢として体面を維持するための必要経費といえなくもない。

 面接で言っていた『それだけカロナを評価している』という発言にもつながる。


「ということは、本当の本当に裏はないというのでしょうか?」

「我々で調べたうちでは、見つかりませんでしたな。もう少し期間をかけたいですが」

「……では、もう少し調べてほしいのですわ!!」


「「承知いたしました、お嬢様」」


 カロナの命令に、二人が頷いた。

 ……


「……あ。御意、の方がよろしかったですかな?」

「ンンッ、それも悪くないですわね……ッ」


―――――――――――――――――――――――――――――


(色々コメントいただけたので、星空プロダクションの秘書AIがそこらへんきちんとまとめてくれた模様ですわー!)

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