通帳を眺めるだけ。


 竜胆寺カロナの中の人、沙耶さやは通帳を眺めていた。


「ふへっ」


 妙な笑いが漏れる。

 通帳には当然貯金額が書かれている。なんと、その額は50万を超えていた。


「なんてこと……私ってばすっごいお金持ちになっちゃってない?」


 これはもはや普段からお肉を買って食べても許されるレベルである。

 しかし忘れがちだが、カロナは何気に社会人――一応、B-Casterとして個人事業主である――なのだ。普通に社会人で稼いでいるなら、まぁカロナがB-Casterしている期間で50万くらい貯めるのはまったく無理のない話だが。


「そうだ、今日はお弁当を食べよう! 半額じゃないヤツ!」

『お嬢様。普通に外食なさってはいかがですか?』

「む。が、外……食?」


 VRヘッドセットからコクヨウの声が聞こえた。


「外食ってあれよね。マテリアルドのハンバーガーとか、吉屋の牛丼とか?」

『お嬢様。ジャンクなファストフードも良いですが、もっとこうレストランとかあるではありませんか』

「……! ガスゼリヤ!? さ、さすがにデニーホストは高すぎ、だよね」

『ファミレスですか……まぁ無駄遣いをしないお嬢様らしいですね』

『爺の教育のたまものですな。幼き頃から無駄遣いをしないように口を酸っぱく言っておりましたからね。ほっほっほ』


 VRヘッドセットからセバスの声もする。

 戦場では1口の水が勝敗を分けることもあるから仕方がないのだ。と、セバスが沙耶の貧乏性を教育したことになった。


「うーん、それよりもコクヨウやセバスの行動範囲を広げてあげたいところだけど……」

『ふむ。私はBCD内のお屋敷で十分なのですが』

『お気持ちは嬉しいですわ。けれど、AIは色々と規制がありますから、厳しいですね』

「規制? そうなんだ」


 昔の低次元AIはさておき、デブリ技術を用いて作られた高次元AIは人間以上にデブリを作ってしまうことがある。故に、高次元AIの運用には規制があるのだ。

 現状、カロナがVRヘッドセットをつけっぱなしでコクヨウ達を使っているのはかなり黒に近いグレーゾーンであったりする。


『抜け道としては、VRヘッドセットをもう一台購入して置くくらいでしょうか? 二か所に置けば、私も二か所でお嬢様とお話しできます』

「ワンルームだとそれほど必要は無いかなぁ」


 それに没入型VR機器は高い。……確かに今の貯金で買えない程というわけではないが、10万円くらいはする。


「……あ、でも今私が使ってるの旧型の型落ちだし、仕事道具に力を入れるって意味なら新品を買うのもいいかも」

『あら? そうなのですかお嬢様? このVRヘッドセット、とても性能が良いように思えますけれど』

「コクヨウがこれしかしらないからじゃないかな? きっと最新型はすっごいんだよ! 2倍の速度で動けたり!」

『さすがにそれは無いと思いますが』

『爺はこのヘッドセットの方が落ち着きますなぁ……ふぅ、コーヒーが美味い』


 セバス、BCD内でコーヒーを飲んでいる模様。


「セバスってコーヒーも飲むの?」

『戦場では紅茶よりコーヒーの方が合うものでして。草の根を炒ったり、食パンを焦がしたりすれば代替コーヒーを入手しやすいのも利点ですな』

「へー、タンポポコーヒー、みたいな? ちょっと飲んでみたいかも」

『まぁ私が飲んでいたのは実際ただのコゲを溶かした水ですので、お勧めはできませんぞ。雰囲気コーヒーですな』


 実際、沙耶の生活レベルで考えたらそのレベルの代替コーヒーがお似合いなのかもしれないが、それならBCD内で紅茶を嗜む方が良いな、と沙耶は思った。


―――――――――――――――――――――――――――

(ちなみに、1話を7000字とかにするのでなく、

 通常の1話分の長さで区切って話数を増やしているのは、

 その方が読みやすい・書きやすいからってのと、

 書いた端から投下してるからと、

 ……あとPV稼ぎです!!!


 そしてこのあとがきも文字数稼ぎ……

 ……評価もよろしくお願いしますわーーーーーーーーーーー!!)


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