ボス『ヒュージスライム』戦!(1)
ヒュージスライムとの戦いは熾烈を極め――はしなかった。
ただただ、敵が硬い――いや。柔らかかった。
《ダンジョンブレイバー:コメント》
[ミコト]:”ヒュージスライムは数多の小型スライムの集合体で、自身の一部を投げて攻撃してきます。つまり、これを相手に返さなければ、いずれは勝てる……はずです?”
AI受付嬢のアドバイスを受け、ヒュージスライムの放つ小型スライムを明後日の方向に撃ち続けるヤマト達ダンジョンブレイバーの3人。
「なんとも。これはこれで仕上げに丁度いい訓練ですわねぇ」
「まったく、だっ! とう!」
「まさに卒業試験って感じだな。よしッ、ホームラン!」
「今回はセンターフライ程度でも十分ですわよユウタ様」
ヒュージスライムの放つ小型のスライムは、練習で使っていた通常のスライムよりもコアが小さく当てにくい。
また、力加減の強弱も上手く調整できないと飛ばせずにその場で爆ぜる。
サクラが丁度、弾けさせてその体液を受けてしまった。
「きゃっ! やっちゃったぁ……うう、ベトベトよぅ」
《ダンジョンブレイバー:コメント》
”【250¥】やったぜ!”
”【500¥】よくやったヒュージスライム!”
”おいそこ変われ。サクラたんの身体にべっとりまとわりつくとか!”
”↑お前潰れてぐちゃぐちゃになってもいいってのか?”
と、スライムの粘液にべっとりしたサクラだったが、逆にコメントは稼げているようだ。
それにスパチャも。
「……あ、あーれー! 私も失敗してしまいましたわー!」
カロナはわざとスライムを飛ばさずに潰した。が、スライムの粘液はそれほど引っかからなかった。
《竜胆寺カロナちゃんねる:コメント》
”お嬢、わざとらしい。3点”
”服の端にちょっとかかるだけとか……日和ったなお嬢”
”サクラさんを見習ってどうぞ”
「なんでですのよ! もう! もっとバシャッと掛かれって言うの!? この髪型、セットに苦労しますのよ!!」
まぁ正確には最初のクリエイトで苦労しただけで、以降はどんなに冒険しても汚れてもダンジョン探索終了と同時に綺麗さっぱり元通りなのだが。
「……わかるよ、頑張って作ったアバター、汚したくないよね! でも私だってわざと汚してるわけじゃないんだよカロナちゃん!!」
「ひょえっ! も、申し訳ありませんわ。私ったらつい承認欲求が!」
いけない子っ! この! この! と自分の手をぺちぺち叩くカロナ。まぁさほど本気で叩いているわけでもなく、そういう演技なわけだが。
「ボス戦だってのに余裕だなぁ」
「だって、ヒュージスライム滝の所から一歩も動いてきませんもの」
「そうそう。スライム投げてくるばかりで、行動パターンが単純というか」
ただただ時間はかかっている。既に配信時間は2時間を超えていた。
「そういえば今日は時間大丈夫か? 俺たちは夜までいけるが」
「あっ! そ、そういえば17時にタイムセールがありましたわ……!」
《ダンジョンブレイバー:コメント》
”タイムセールww”
”え、この子お嬢様ちゃうの?ww”
《竜胆寺カロナちゃんねる:コメント》
”ようポーターの皆さん。これがお嬢だ”
”カロナイトの日常へようこそ”
”【500¥】食費どぞ。これで一食分気にせず配信を続けるといい”
「! たまみにーさんありがとうですわ!……フフ、今時間が大丈夫になりました!」
「おう。よかったなカロナ嬢」
常連のカロナイトによる支援で、カロナは活動時間が伸びた。
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