こんカロナ~!(配信開始)
「こんカロナ~! いつかお嬢様になりたい系B-Caster、
平日夜になったので配信を始めるカロナ。
意外なことに、専業B-Casterでも曜日感覚はしっかりしている。むしろ専業だからこそ、リスナーの多いボリューム帯を逃さないために配信時間は気にしている。
日課のデイリーはただの記録なので別枠だ。
……当然ライバルも多いわけだが、なんやかんや常連さんは来てくれる時間帯がここなのである。
”こんカロナ”
”こんカロナ。今日ちょっと騒ぎになってたけど大丈夫だった?”
「あら早速常連のカロナイト様が! 騒ぎ? 何のことです? あ、来週ついに秘書AIが実装ですけど、そのことかしら!?」
”企業ダンジョンでなんか設定ミスがあったらしい”
”ペコシのデイリーで企業が初心者殺しダンジョンつくるなって大騒ぎだったんだよ”
「へー、そういう事もあるんですわね。あら? でも私、ペコシって今日も行きましたわね。デイリーで。一応アーカイブのデイリー配信のリストにいれてますわ。別段変わったところはなかったと思いますけども」
”マ? ちょっと見てくる”
「あら? いってらっしゃいましー。……えーっと。とりあえず配信を続けますわよ」
視聴者数は3なので、引き続き配信を続けていくことにしたカロナ。
「秘書AI、情報によれば執事型とかメイド型にカスタムしてルームにもキャラクターとして配置できるみたいなんですの! これはもう購入まったなし――と言いたいところなのですが、2体とも買うと貯蓄が底をついてしまいますの。なので今日は、ちょっと冒険に出てみようと思いますわ!」
”冒険?”
”こんカロ。今来たけど冒険って?”
「ふふふ。ついにアレです、その、いままで私、ソロダンジョンオンリーだったじゃないですか? なので、その、マルチダンジョンに突撃してみようと思いますの! 報酬も高いですし!」
”おおー!……PKが怖いな”
”マルチは多人数前提。報酬は一人当たりでソロよりちょっと高いくらいになりますね”
”ただいま。お嬢、アーカイブなんだけど拡散していい? 悪い事にはならないしこのチャンネルの宣伝になると思うけど”
先ほどアーカイブを見に行った視聴者が戻ってきた。
しかし拡散とは……いつも通りのダンジョンにしか思えなかったけれども。
「別に構いませんわ。なんなら切り抜きしてもよろしくてよ?」
”おk、切り抜きも親登録しとくわ”
「親登録?……ああ、切り抜き元に利益還元されるのですわね。……つまり不労所得!? お金持ちへの第一歩!! 大歓迎大嵐バーゲンセールですわ!!!」
”語彙w”
”大嵐バーゲンw 切り抜きできたら俺も拡散するからURL教えて”
”おk、折角だしカッコ良く切り抜いとく。配信見ながら作業するよ”
切り抜きとか作られるの初めてですわー! 一流配信者みたいですわよ、きゃー! と大喜びなカロナ。
「楽しみにしてますわー!……はっ、そうそう。それで今日はマルチダンジョンに行こうと思いますの! けどあんまり人と会いたくはないから不人気そうな所で。でも秘書AIの執事タイプとか欲しいので少し攻めていきますわよ!」
と、カロナはダンジョンのリストを開く。ホログラムの窓に事前にチェックしたダンジョンが表示されていく。
”お嬢マルチデビューかぁ、がんばえー”
”お、これ結構いい報酬だな。報酬はクリア先着1名、報酬総取り”
”それリタイア不可だから多分デスゲーム系だ。設定次第ではどうやっても開催側が儲かるシステムで、常に一定数存在してるぞ”
「げ、デスゲームってことは対人戦ですわね……自信ないのでそれは除いときますわ」
流石に
そもそも本来ダンジョンの攻略においては対人戦なんてする必要がないことだし……とごにょごにょ言い訳するカロナ。
と、残ったリストを見ていて「ん?」と引っかかるものがあった。
●ダンジョン情報『赤の洞窟』 マルチタイプ(クリア先着1名終了)
タイプ :洞窟型
属性 :火
賞金 :総額25万円(貢献度山分け)
レート :1HP=100円
突入条件 :HP100以上・DEF50以上
追加ルール:対人攻撃NG
「見てくださいまし。こちら『対人攻撃NG』の追加ルールがありますわよ! しかも先着1名クリア時で終了ですが貢献度で賞金山分け!」
”おっ。貢献度分配は協力してクリアを目指すタイプだね”
”リアルダンジョンに近いんじゃない? むしろいいかも”
『対人攻撃NG』の追加ルールを確認すると、仮に他プレイヤーに攻撃してしまった場合は攻撃側のプレイヤーが罰金として減HP分を相手に支払うルールらしい。誤射されても損がない素敵なルールだった。
”へー、そんなのあるんだ”
”いいじゃん、それならむしろ対人戦が絶対ないな。他のダンジョンにも導入すべき”
「これならプレイヤー同士の争いがあってもレースとかに違いないですわ。今日向かうのはここに決めました!」
カロナは『エントリー』と書かれたボタンを押す。
接続され、転送のカウントダウンが始まった。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……ゼロ! カロナ、いきますわー!!」
”カウントダウン助かる”
”カウントダウン使える”
「??? 使えるとか助かるとかってなんなんですの?」
えっちなボイス作品のお約束を知らない首を傾げつつ、カロナは初めてのマルチダンジョンへと足を踏み入れたのであった。
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