第39話
私達は古城の中を歩き回った。
どこか出られるところはないか。警備状況はどうなっているのか。有名な絵画をひっくり返したり、壺の中を覗いたりもした。
しかしこれと言った異変もなく、犯行に関わりそうなことも見当たらなかった。
それにしてもやはりこの城は美しい。細部までいにしえの職人が作り込み、同時に住んできた王族達の愛情も感じる。
今の王が住む新しい城と比べればかなり手狭だが、歴史を感じられるのは断然こちらだ。
新しい城は昔の王が隣国と比べても負けない城を作れと命じて作られた。
イガヌの城もすごいらしいが、なによりは南の大国ゴリガリの首都にある城郭は大きさも豪華さも桁違いだそうだ。なんでも一つの街がすっぽり入り、それら全てを金で装飾してあるとか。
それらに比べてこの古城は如何にも弱々しく華がない。だから新しく作った城はこの大陸でも最も高い天守塔を誇っている。さすがにゴリガリと比べれば広さは見劣りするが、それでも荘厳で立派な城だ。
だが個人的な好みで言えばこちらの古城の方が良い。歴史を感じられるし、温かみがある。この国で生まれてよかったと思わせてくれる居心地の良い城だった。
こんな城で殺人を犯すなんて。いや、だからこそなのかもしれない。スパイからすれば国の象徴とも言える場所を汚せるわけだ。保守的な魔法反対派にしてもこういった古城は懐古主義を刺激するのだろう。
城をあらかた回ると私達はローレンスの部下から話を聞きに守衛室へと向かった。
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