第21話

『魔機構』サイラスは嘘をついていた。

 その事実に私達は困惑していた。

 あれからイヴリンはこう続けた。

「シモンさんの部屋から出たあと、ロビーに飲み物を取りに行ったんですけど、その帰りにサイラスさんがシモンさんの部屋に入っていくのを見たんです」

 イヴリンは私達の反応を見て、しまったという顔をしておずおずとこちらを見上げる。

「……もしかしてサイラスさんから聞いてませんでした?」

 私達は顔を見合わせ、イヴリンに礼を言ってから部屋から出た。

「すぐに問い詰めましょう」

 ローレンスはそう進言したが意外にもシャロンはかぶりを振った。

「まだよ」

「しかしもし彼が犯人なら証拠隠滅の可能性があります。今この時も犯行に使ったなにかを消し去っているかもしれない」

「だとしてもまだよ」

「なぜですか!?」

 問い詰めるローレンスにシャロンはさらりと言った。

「疲れたから。まずは休憩よ。紅茶の準備をしてちょうだい」

 あまりにも自分勝手な言葉にローレンスは口をポカンと開けていた。

 シャロンは「この体は疲れるって言ってるでしょう。分かったらさっさと動いて」と当たり前のように言い、私に向かって両手を伸ばした。

 私はローレンスと顔を見合わせてから嘆息し、屈んでシャロンを抱き上げた。

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