第13話

 部屋から出ると私はシャロンに尋ねた。

「どうでした?」

「魔法を使ったかどうか? 使ってたわよ」

 シャロンはあっさりと言った。しかし無断での魔法使用は法律違反だ。

「ど、どんな魔法か分かるんですか?」

「多少はね。一つは立った時の顔の辺りに小さな痕があったわ。おそらく煙草の火でも付けたんでしょう。それとグラスにもあったから引き寄せたんだと思うわ」

 あまりにも地味な魔法に私は拍子抜けした。そんな魔法では殺人なんて無理だ。

「それだけですか?」

「見えたのはね。誰だってそうよ。人の見てないところじゃ多少のルール違反はするでしょ。それが誰の迷惑にならなければ尚更よ。坊や達もそうでしょう?」

「わ、私は軍人ですから規範は守ります」

「自分もです」とローレンスも答えた。

 シャロンはつまらなそうに苦笑する。

「坊や達、モテないわね」

 その指摘に私とローレンスは図星を指された。お互い独身だ。女性と会うこともあるが、よく話がつまらないと言われる。私達はばつが悪そうに顔を見合わせた。

「魅力がないのは挑戦をしないから。若いんだからもっと広い視野で物事を見なさい」

「……勉強になります」

 私が頭を下げるとシャロンはニコリと笑った。

「さあ。次に行きましょう」

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