第11話 男子高校生、探す

 早志は、公園にて、冒険者ギルドで貰ったクエストの資料を眺めていた。


 玉石については、ギルドに預けた方が安全だと思い、ギルドに預けている。


 早志は渋い顔で資料から顔を上げた。


「なんか、体よく使われた気がする」


「それでお金が貰えるのだから、結果オーライフェソ」


 隣に座るフェソソソがマフィンを美味しそうに食べながら言った。


「結果オーライなのかなぁ」


 そうは思えないが、フェソソソに言っても仕方がないと思い、その言葉を飲み込む。


 早志は改めて資料の内容を確認する。


 今回のクエストは、宝石店を襲った『黒猫盗団』という名前の盗賊団を捕まえることだった。


 黒猫盗団については、犯行時に黒猫のマークが入ったカードを残す以外のことはわかっていない。だから、その他の情報は自力で見つけるしかなかった。


「フェソは、この黒猫盗団とやらを知らないの?」


「知らないフェソ」


「そっかぁ。じゃあ、どうやれば捕まえられるかも知らないよね?」


「それに関しては、名案があるフェソ」


「何?」


「まず、落とし穴を掘るフェソ。その上に土を被せて、マフィンを置けば、捕まえることができるフェソ」


「……そんなトラップに引っかかるのはフェソくらいだろ」


「な、失礼しちゃうフェソ。それじゃあ、フェソが間抜けみたいだフェソ」


 顔を赤くするフェソソソに対し、早志は苦笑で答えた。


「しかし、どうしたもんかなぁ」


「思ったんだけど、ハヤシが持っていた玉石は、もしかしたら盗品かもしれないフェソ」


「でも、俺は盗んでないよ?」


「フェソ。だから、盗賊団の人が、あの場所に一時的に玉石を隠していたんだけど、ハヤシがそれを見つけてしまった」


「……なるほど。その可能性はあるかもね。気づかなかったわ。流石だな、フェソ」


「フェソ!」とフェソソソは胸を張る。


「もしも、あれが盗品だったんだとしたら、回収しに来るかもしれないな」


「その可能性は十分あるフェソ」


「じゃあ、また河原に行ってみるか」


「フェソ!」


 そして二人は、昨日と同じ河原へとやってきた。


「昨日、玉石を見つけたのは、この辺りだったよな?」


「フェソ!」


 二人は玉石を見つけた粘土層を確認しようと近づこうとする。が、そこでハヤシがあることに気づき、フェソソソの手を掴む。


「どうしたフェソ?」


「地面を見ろ」


 見ると、そこはぬかるんだ場所になっていて、そこに足跡があった。


 早志は自分の靴の靴裏を確認してから、足跡に視線を移す。


「見た感じ、ここに三つの足跡がある。一つは俺の足跡で、もう一つは大きさ的にフェソソソの足跡だろう。となると、もう一つは――」


「盗賊団の人間かもしれないフェソ!」


 早志は頷く。その可能性は高い。


「ただ、問題はこれがいつできたかだ。昨日はこんな足跡、無かった気がするけど」


「もしかしたら、今日の朝とかにやってきたのかもしれないフェソ」


「その可能性はあるな」


「ということは、もしかしたら、再確認のために、またここに来るかもしれないフェソ」


「確かに」


「よし! なら、マフィントラップを仕掛けるフェソ」


「いや、何でだよ。それで引っかかるやつはいないだろ」


「やってみないとわからないフェソ! ということで、早速仕掛けるフェソ。ちょっと離れているフェソ」


 早志は呆れながらも、フェソソソの言葉に従って、離れた。


 フェソソソは地面に手を置く。すると魔方陣が展開した後、すぅと消える。フェソソソは魔方陣が出現した場所の中心にマフィンを置いて、その場から離れた。


「これで準備完了フェソ」


「今のが魔法?」


「そうだ。フェソ。ささ、隠れて様子を見るフェソ」


 早志は半信半疑だったが、フェソソソが自信満々だったので、少しだけ信じてみることにした。

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