第10話 男子高校生、疑われる
「こちらはどこで手に入れましたか?」
「街の外れの河原で見つけましたけど」
「そうですか」
「あの、これって『レッドドラゴンの玉石』ですよね?」
早志が指摘すると、受付の女性は「ええ、まぁ、多分」と曖昧に答える。
「鑑定してみないことにはわかりません」
「それって、すぐにできるんですか?」
「ええ、まぁ。少々お待ちください」
女性は『レッドドラゴンの玉石』を大事そうに布に包むと奥の部屋へ消えた。
そして、神妙な顔で戻ってくる。
「ちょっと奥の部屋へ来ていただけませんか?」
「……はい」
物々しい雰囲気に、早志は緊張する。宝くじが当たると別の部屋に通されると聞くが、こんな感じなのだろうか。
女性の後に続き、早志は奥の部屋へ移動した。そこには、先ほどのギルド長と右目に丸い眼鏡をかけた男がいて、胸元に『鑑定士』と書かれた札がついていた。
ギルド長は、早志を一瞥し、愉快そうに笑う。
「君は本当に面白い男だな」
「……どうも」
ギルド長の言葉は、誉め言葉として受け取っておく。
早志は、女性に促され、ギルド長と鑑定士の対面に座った。
「これは確認なのですが――」と鑑定士。
「この玉石は街の外れで拾ったとのことですが、本当でしょうか?」
「はい。あそこにあった粘土層を掘っていたら、見つけました」
「そうですか」
「あの、それって本物ですよね?」
「ええ、まぁ」と鑑定士が不服そうな顔で言ったので、早志はその表情が気になったが、質問する。
「そちらを換金していただけると聞いたのですが、していただけるのですか?」
「ああ、換金はできる。――これが盗品じゃなかったらな」
ギルド長の鋭い視線に、早志は困惑する。
「盗品? いや、俺は本当に河原で見つけたんです」
「それを証明できるか?」
「証明と言われると、難しいのですが、これは河原で見つけたよね?」
早志はフェソソソに救いの目を向ける。
「フェソ!」
フェソソソが元気に頷く。
「これは河原で見つけたものフェソ」
「子供の言うことなど――」
「フェソの言うことが信じられないフェソ?」
フェソソソの言葉を否定しようとしたギルド長であったが、フェソソソに潤んだ瞳で見つめられ、たじろぐ。
(いいぞ、フェソ。その調子だ!)
早志は心の中でフェソソソを応援した。
すると、ギルド長は「こほん」と咳ばらいした後、真摯な顔になる。
「実は、最近、宝石屋に盗賊が入って、『レッドドラゴンの玉石』が盗まれる事件が発生したんだ。だから我々は、これが盗品なんじゃないかと疑っているわけだ」
「……そういうことでしたか」
それなら、疑われた理由もわかる。最初から言ってくれればいいのに。
「つまり、俺はこれが盗品じゃないことを証明すればいいってことですね?」
「ああ」
「と言っても、どうすればいいんでしょう? 難しいですね」
「方法ならあるぞ」
「何ですか?」
「その盗賊団を見つけて、捕まえればいい。そしたら、盗品の『レッドドラゴンの玉石』が見つかるだろ?」
「……確かに」
「んじゃ、そういうことで、盗賊団を見つけてくれ!」
「いや、ノリが軽いな」
早志は困り顔になる。盗賊団を見つけろと言われても、見つけられる気がしない。なぜなら、早志はただの高校生であり、警察めいたことをやったことはないからだ。
(でも、なんかワクワクはするよな)
もっと他にいろいろやることがある気はするのだが、珍しい体験ができそうだし、ちょっと興味はある。
「……わかりました。見つけられるかわかりませんが、少しだけなら」
「ふむ。何事も挑戦することが大事だ。ちなみにこれはクエストだから、ちゃんと手続きをしてね」
「え」
そばに立っていた女性が紙を差し出す。そこに今回のクエストの概要が書かれていた――。
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