第8話 男子高校生、因縁をつけられる
「……フェソ。もう一度、聞くぞ? このステータスってすごいの?」
早志は『実はすごい』と表示されたステータス・ウインドウをフェソソソに見せる。
フェソソソはウインドウから早志に視線を移し、言った。
「すごくないフェソ」
「あれ? もしかして、俺と違ったものが見えてる? 俺には、『実はすごい』と書いてあるように見えるんだが」
「フェソ。フェソにもそう見えるフェソ」
「なら、何で、すごくないんだよ」
「『実は』がついているからフェソ。『実は』ということは、その前に否定したい事象が存在するフェソ。それが『すごくない』だフェソ」
「……ん? つまり、前提って評価しているってこと?」
「フェソ」
「いや、何でだよ。前提で評価する必要なくね? 前提での評価がありなら、何でもありになるじゃん」
フェソソソは眉根を寄せて、口をすぼめる。自分に言われても困る――そんな風に言いたげな表情だ。
もしかしたら、フェソソソが変わっているのかもしれない。
そう思って、早志は受付の女性にもステータスを見せてみる。
「あの、これが俺のステータスなんですけど」
女性は早志のステータスを一瞥した後、鼻で笑う。そして、「失礼」と言って、居住まいをただした。
「立派なステータスだと思います」
「そうは見えない反応でしたけど。え? 何で前提で評価するんですか?」
「前提で評価? 何のことですか?」
「もしかして、前提で評価していない感じですか?」
「はい」
「あ、すみません。俺の早とちりでした」
「誤解が解けたようで、良かったです。それじゃあ、そのステータスですと、最低ランクのEランクから始めてもらうことになります」
「やっぱり、前提で評価しているでしょ!?」
「おいおい、雑魚がぎゃんぎゃん騒いでんじゃねぇぞ」
早志は振り返る。モヒカンでトゲ付きの肩パッドを装着した人相の悪い男たちがぞろぞろやってくる。
「誰ですか、あなたは?」
早志が怪訝な表情をする。
「やべぇぞ、あいつ」とそばで見ていた冒険者の囁き声が聞こえる。
「Aランクのブヒーに絡まれているぞ」
「死んだな。新人がAランクに勝てるわけがない」
早志は視線を男に戻す。目の前のモヒカンが、ブヒーなのだろうか。
「あの、あなたがブヒーさんでしょうか?」
「いかにも。俺を知っているとは、やるじゃねぇか」
「……どうも」
周りに聞き耳を立てていただけで、とくに褒められることをした覚えはないが、素直に受け取っておく。
早志はブヒーを観察した。周りの人間は、彼をAランクと言って恐れているが、早志には高いランクの人間には見えなかった。どことなく、下っ端臭があふれ出ている。
「お前、みっともねぇぞ。素直に、Eランクから始めろ」
「いや、まぁ、Eランクから始めること自体は別に良いんですけど、ただ、俺のステータスを適正に評価されていないように感じるので、そこについては不満があります」
「何? 適正に評価ができていないだと? どれ、見せてみろ」
早志は自分のステータス・ウインドウをブヒーに見せる。
すると、ブヒーとその一味は、腹を抱えて、げらげら笑いだした。
「こいつは傑作だ。このステータスでよくもまぁ、そんなに強気になれたな」
「もしかして、あなたも前提で評価している感じですか? 何で? 意味なくないですか?」
「あぁん? 前提とかわけのわらんことを言っているんじゃねぇぞ」
「えぇ、そんなに難しいことは言っていないと思うのですが」
「そんなに不満があるなら、よし、俺がてめぇの実力を測ってやろうじゃねぇか。ちなみに、俺のステータスを見て、ビビるなよ?」
そう言って、ブヒーが見せたステータス・ウインドウに表示されていた一文は――。
『実は弱い』
早志は頭を抱える。この世界のことがわからなくなってきた。
「どうやら、俺のステータスに恐れをなしたみたいだな」
「ええ、まぁ。そのステータスで威張れるあなたのメンタルに、俺は恐怖しましたよ」
「そうか。なら、死ねぇぇ!」
ブヒーが殴りかかってきた!
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