第7話 男子高校生、冒険者ギルドに行く

 翌朝。早志はフェソソソと一緒に、宿屋で朝食を食べていた。パンの上に乗った目玉焼きを、フェソソソは「うまうま」と頬張るっている。


「よくよく考えたら、俺、これからどうしたらいいんだろう……」


「スローライフするフェソ!」


「まぁ、それはいいんだけどさ、その前に住む場所を確保した方が良い気がしてきた。いつも宿屋に泊まるわけにはいかないだろうし。というか、スローライフなら、山とかに小屋を作った方が良いのか?」


「フェソは温かいベッドの上で寝たいフェソ。せっかく、人間の姿になれたことだし、人間としての生活を満喫したいフェソ」


「わがままだな。でも、毎日、宿屋だと金が足りなくなる」


「なら、冒険者ギルドに行くことをお勧めするフェソ。そこで、冒険者の登録を行えば、収入を得ることができるようになるフェソ」


「そうなんだ。冒険者って何をするの?」


「いろいろやっているフェソ。薬草採取だったり、モンスターを倒したり。その辺は、ギルドから受注した仕事の内容によって決まるフェソ」


「何でも屋みたいな感じか。でも、そんな仕事、俺にできるのかな?」


「フェソはできると思うフェソ。まぁ、心配なら、初心者から始めることができる仕事もあるフェソ。とりあえず、それをやってみるといいんじゃないかな、と思うフェソ」


「なるほど。冒険者ギルドと言えば、昨日手に入れた玉石とやらも換金してくれるんだっけ?」


「そのはずフェソ」


「なら、行ってみるか」


 朝食後。早志はフェソソソとともに、冒険者ギルドへと向かった。


 冒険者ギルドは、宿屋から歩いて10分ほどの所にある。木造の建物だった。二階が酒場になっているらしく、物騒な面持ちの人間が出入りしていた。


「ここでいいんだよな?」


「フェソ」


 早志が中に入ると、鋭い殺気が英雄を襲う。ダンジョン内の雰囲気は殺伐としていて、息苦しい感じがあった。


「なぁ、俺は場違いじゃないかな?」


「そんなことないフェソ! 胸を張って歩くフェソ」


 フェソソソに背中を押されるも、早志は森に迷い込んだ小動物のような雰囲気で、カウンターの前まで進んだ。


 カウンターには気の強そうな女性が座っていた。早志は緊張した面持ちで話しかける。


「すみません。冒険者の登録をしたいんですが、こちらでできますか?」


「はい。できますよ」


 女性が冒険者や登録の仕方について淡々と説明してくれる。思っていたよりも冒険者には簡単になれそうだった。


「――それじゃあ、ステータスを見せてもらっても良いですか?」


「ステータス?」


 フェソソソに説明を求める。フェソソソは語る。


「ステータスとは、HPやMP、筋力など、合計50にも及ぶ項目で評価された個人の能力を指標化したものフェソ」


「ステータスを見れば、個人の能力がわかるんだ。それはすごいな。どうやれば、ステータスを見れるの?」


「『ステータス・オープン』と言えば、ウインドウが開くフェソ」


「なるほど。ステータス・オープン」


 早志は半信半疑でステータス・オープンしてみた。


 その結果、宙にウインドウが表示された。


 早志は驚きつつウインドウを確認する。


 そこに示されていたのは――。


『実はすごい』


 早志は自分の目を疑った。一度目をつむって、もう一度確認する。しかし、そこに表示されているのは、『実はすごい』の一文だけだった。


「あの、フェソさん」


「なんだフェソ?」


「ステータスって、50の項目で評価されているんですよね?」


「フェソ。でも、それが表示されるとは言っていないフェソ」


「……マジかよ。その50の項目の評価結果を表示することは?」


「できないフェソ」


 早志は言葉を失う。わざわざ50の項目で評価しているのであれば、素直に表示して欲しいところだ。


 一文で済ませようとする魂胆がわからない。


 そのことをフェソソソに問うのも違うと思ったので、早志は渋々その結果を受け入れて、ウインドウを再確認する。


「なぁ、フェソ。これってすごいステータスなのか?」


「それは――すごくないフェソ」


 早志は頭が痛くなってきた。

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