第5話 男子高校生、教えてもらう
早志はフェソソソとともに公園のベンチに座っていた。隣に座るフェソソソは、ぽろぽろこぼしながらも、嬉々とした表情でマフィンを味わっていた。
「美味しい?」
「うん。美味しいフェソ!」
満面の笑みを浮かべるフェソソソを見て、早志はほっこりする。妹がいたら、こんな感じかもしれない。周りからも、兄弟と思われているのか、温かい視線が向けられていた。
「フェソソソって、普通の人からも見えている感じ?」
「フェソでいいフェソ。うん。周りの人間も、フェソのプリチィさにメロメロフェソ」
「そっか」
フェソソソはマフィンを食べ終えると、満足そうにお腹をさすった。
「お腹いっぱいフェソ。ごちそうさまフェソ」
「どういたしまして」
「それじゃあ、フェソは帰るフェソ」
早志は、ベンチから降りようとしたフェソソソの首元を掴む。
「ちょっと待て、俺の質問に答えてよ」
「冗談フェソ」
フェソソソは苦笑しながら、ベンチに座り直す。
「それで、ハヤシはフェソに何を聞きたいんでフェソ? フェソは解説妖精だから、博識フェソ」
「そうだな……。まずは、その解説妖精って何?」
「解説妖精は、人々の相談に答える妖精フェソ」
「へぇ。まさに今の俺に必要な存在だわ」
「へへっ、照れるフェソ」
「……べつに褒めたつもりはないけど。まぁ、いいや。その相談ってやつは無償でやってくれるの?」
「基本的には。でも、さっきみたいにマフィンをくれると、フェソは嬉しいフェソ」
「りょーかい」
「それで、ハヤシが聞きたいことって何?」
「え、あ、そうだな」
改めて質問しようとすると、いろいろありすぎて、どれから質問すればいいかわからなくなる。
「は~や~く」
フェソソソに急かされて、慌てて質問を捻りだす。
「さっき言っていた『展開者』って何?」
「『展開系』のスキルが使える人間のことフェソ。展開系のスキルというのは、世界の理に干渉し、周囲を自分の意のままに動かすことができるスキルフェソ」
「スキルっていうのは、特殊能力みたいな認識で合っている?」
「そんな感じフェソ」
「ふぅん。じゃあ、俺のスキルってめちゃくちゃ強いじゃん」
「そうだフェソ。ただ、展開系の中にも強弱はあって、おそらくだけど、ハヤシのスキルは強い部類に入る……と思うフェソ。フェソは、これまで何人かの展開者に会ってきたけど、フェソをこんな風にできたのはハヤシが初めてだから、きっと強いフェソ」
「ふぅん」
「……もしかして、ハヤシは自分のスキルについてよくわかっていない感じフェソ?」
「ああ。実は、勇者召喚されたばかりで、わからないことだらけなんだ」
「勇者召喚。なるフェソ」
「勇者召喚については知ってる?」
「もちろんフェソ! 勇者召喚は、この国の王族だけが使えるとされる召喚魔法で、その詳細は王族以外誰も知らないフェソ。そして、この召喚魔法によって、異世界人が勇者として召喚されるフェソ。ちなみに勇者というのは、魔王に対抗する人間代表のことだフェソ」
「勇者の補足助かる。つまり俺は、魔王と戦うためにこの世界に召喚されたというわけね。じゃあ、俺は魔王を倒したら、元の世界に戻れるの?」
「それはわからないフェソ。フェソも詳細は知らないんだけど、勇者召喚をした際に課せられた条件をクリアすれば、元の世界へ帰れるらしいフェソ。この条件は、ハヤシを召喚した女王に聞いて欲しいフェソ」
「……マジか。じゃあ、難しいな。女王に追放されちゃったし」
「追放? 何か悪いことをしたフェソ?」
「いや、してない……はず」
「なら、スキルの影響かもしれないフェソ。ハヤシのスキルは周りに影響を及ぼすフェソ。でも、ハヤシがその力をうまく制御できていないんだとしたら、それが悪い方向に出てしまった結果、追放されてしまったんだと思うフェソ。フェソがこんな姿になってしまったのも、ハヤシの幼女趣味だと思ったんだけど、もしかして、これもハヤシが望んだわけではないフェソ?」
「ああ。俺に幼女趣味はない」
「と言いつつ~」
「無いわ! ただ、言われてみたら、女王陛下以外も言動がおかしくなっていたし、俺のスキルが悪い方向に作用してしまったことは否めないな。どうすればいいんだ?」
「スキルを使いこなせるように鍛えるフェソ。そのために――スローライフを始めるフェソ!」
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