第3話 バンド結成!その名もザ・青春バンド!

 レコードに針を落とした…



 ブツ、ジジジとレコード針が溝に沿って走っている音がした、次の瞬間。


「チィー、チィー、チィー、チィー…」



 ドラムの音が聞こえた。その後に激しいギターの音が流れ、身体が吹っ飛びそうな感覚を覚え、そこに畳み掛けるような、ボーカルの声…コンポの最大ボリュームで聞いているから



「んー!」衝撃の波・波・波!


 4人組は、一気に「レッド・ツエッペリン」のファンになってしまった…


「どうだ、良かったろ?」

「す、スゲー、スゲー!」



4人組は大はしゃぎ!


「ギター、カッケー!」

「ズシンとくるサウンド、カッケー!」

「ボーカル、カッケー!」


 語彙力のない4人組はひたすら「カッケー!」を繰り返していた。


「それにしても、よく持ってたなぁ」

「親父のなんだ!昔、真似してたって!」

「親父さん、バンドマンだったのか」

「おっちゃん、ありがとう!」

「おう、また来いよ!」


 家に帰る途中も4人組は、レッド・ツエッペリンの話で持ちきり、喧嘩を売られても、また今度といなすぐらいに興奮していた。


「ただいま!親父は?」

「今は飲みに行ってるわよ、お土産楽しみにしとけって言われたわよ。」


 しばらくして、親父が少し酔って帰って来た。


「お帰り!親父!」

「おう!どうだった、ツエッペリンは!」

「最高だよ!スゲーよ!」

「そうかそうか、お前はやっぱり俺等の子だ!」

「ふたりで何の話してるの?」

「聞いてくれ!涼介がツエッペリンのファンになったんだよ!」

「まぁ!それはよかったわ!」

「これから、皆でツエッペリンの良さを語り合おうじゃないか!」

「ゴメン!私、これから仕事なの!」

 そそくさと母親は家を出ていく。


 親父とツエッペリンの話をさんざんしたあとで

「親父もツエッペリンみたいにバンドやってたんだろ?」

「おう!カッコ良かったんだぞ!と、言うか、あの時代は、皆、ツエッペリンだったな〜」

「そんなにバンドがいたの?」

「ああ、コピーバンドと言うやつさ」

「好きなツエッペリンの曲をコピーしてライブハウスでライブするんだよ!」

「へぇ〜、かっこいいね!」

「よし、いい物を見せてやろう」



 押入れをゴソゴソと…取り出したのはアルバム

「ほれ、コレが俺とお母さんだ!」


 そこには、青春を謳歌している、キラキラと輝く二人の姿が写った写真に目を釘付けされた。


「カッコいいなぁ、僕も親父と同じような青春を送ってみたいよ…」

「だったら、やりゃあいーじゃねーか?」

「え?何を?」

「バンドだよ、バ・ン・ド!」

「でも、楽器ないし…」

「買ってやる!」

「弾いたことないし…」

「練習しろ!」

「女みたいにウジウジすんな!やれ!」

「はい!」


 すぐに仲間に電話をしたら、みんな二つ返事で「ヤロウ!」と帰って来た。

 その様子をニヤニヤしながら親父が酒を飲んでいた。



 次の日の学校の屋上で

「バンドするとしても何からすりゃいいんだ?」

「とりあえず、誰が何をするか…だな?」

「じゃあ、俺、ギター!」

「ズルいぞ!俺がギターだ!」

「俺だよ、俺!」

「イヤイヤ、俺だって!」

…結局、全員ギターかよ…


「とりあえず、帰りに楽器屋に行こーぜ!」

 学校のチャイムと同時に階段を降り、面倒くさい飛び降り、校門へ急ぐと

「コラーッ!」新井先生の声…

「今日はレコード、持ってないよな?」

「は、はい!」

「今日はこれから、どこに行く?」

「すすきのの楽器屋です!」

「ほう、お前らバンドでもしようってのか?」

「は、はい!」

「がんばれよ!」

 竹刀でケツをシバかれた。


「失礼します!」

「あっ、百田!」

「はい?」と、涼介が呼ばれ、頭を抱えられながら、

「今度、あのレコード貸してくれ!」

「え?」

「俺もツエッペリンのファンなんだよ!」

「はい!わかりました!」

「よし!いってこい!」


 すすきのへと向かう道中、雅也が言った。

「なぁ〜バンド名、どうすんだ!」

「そんなの決まってる!」

「なんだ?」

「ザ・青春バンドだ!」

「ザ・青春バンド!いいねぇー!」

「今日から俺等は、青春バンドだー!」


 夕焼けに染まる道を俺達4人組は、全力で走って行った。









「おっ、とうとうバンドの結成ですか!」

「それが、簡単には行かんかったんだよね〜」

「何が、あったんです?」

「それはね…」

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