第6話 生あるものへの告白

「それはどういう意味だ?」

男は前のめりなってケンに問いただす。

ケンは椅子から立ち上がると部屋の奥の扉を開け廊下に向かって声をかけた。


「No.520 高島孝弘たかしまたかひろ こちらへ来なさい」

ケンに続いて背の高い白髪交じりの眼鏡をかけた男性が部屋に入ってきた。

そして私の斜め前、ケンの隣にその男を座らせる。


「!?!?!」

金山は声にならない声を上げその高島という男を見つめていた。

「何でお前がここに?一体何があったんだ?」


「No.520 高島孝弘 享年61歳 会社役員」

「採点結果 81/500点 死因は入水じゅすい自殺」


えっ?金山は驚きの声を上げる。


「この報告に相違はないな?」

「はい、その通りです。」

高島はゆっくりと頷いた。

「出発までまだ少し時間はある、最後に何か言い残す言葉はあるか?」


はい…

高島は語り始めた。


「金山社長が事故死した後、私は臨時的にその後を継ぎました」

「そしてその数日後、農水省からの査察が我が社に入りました」

 どうやら内部から告発者が出たようです」


「!」


「産地を偽装した食品を国産と偽って販売…

 これが大きなニュースになって 私は釈明と謝罪に追われました」

「帰宅すると家の壁には落書きをされ、脅迫電話が毎日のようにかかり

 罵声を浴びせられる日々が続きました」

「食事もろくに喉を通らず、夜も眠れず、心身ともに疲れ果てた私は…」


高島は目の端に涙を湛えながら唾を飲み込み

俯いたまま顔を震わせて続けた。


「近くの川へ身を投げました」


「今思うと、後悔の念ばかりが溢れて…」

「残してきた妻や子供たちの事を思うと…うぅっ、うっ…」

高島は嗚咽を漏らしながら話す。


ケンは深くため息をついて語りだした。


「君は前世ではそれなりに働いて結果を残してきたようだな

 だが産地偽装、多くの人を欺いてきたその行為は決して軽くはない罪だ

 そして『自殺』これは大きな減点対象となる」


「私の上司が定めた"その人としての運命"に大きく背く重大違反行為だからな」

「私どもの仕事は順番通りに天命を全うした人間を審査し、導く

 君はその段取りを狂わせた そしてその自死により家族を不幸にした」



高島は涙を拭いながら深く頷く。


「はい…」

「地獄に行く覚悟は出来ています」



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