第5話 裏と表
その男はケンの両肩を掴み激しくゆする。
男の片手には数枚の紙がしわくちゃになって握られていた。
「俺の点数がたったの17点だと?一体どういう計算なんだこれは!」
男の後ろには気の弱そうな小柄な女性が隠れていた。
そして何やら助けを求めるような視線で
ケンに目配せをしているようだった。
「リン、下がっていなさい
私の担当外だがこの男には私から説明しよう」
そう言われると安堵したような表情でこちらにペコリと頭を下げると
そのリンと言う女性は静かに奥に消えていった。
「おい!聞いてるのか?」
「まぁ落ち着きなさい とりあえずそこにかけなさい」
ケンは男にそういうと私の隣りに座らせた。
「あんたが持ってるその採点結果を見せてくれ 誤りがないかチェックする」
そう言われるとその男はテーブルの上にその紙を叩きつけた。
…
………。
「うむ、何も間違いはないな。採点結果通りだ」
「!?」
男は焦りとも驚きとも取れる表情を浮かべる。
「No.499
「そうだ!あの時の事は鮮明に覚えてるぞ 俺は交通事故に遭って死んだんだ」
「違うな」
「何?」
「あんた今何て言った?もう一度言ってみてくれ」
「だから交通事故に遭って…
金山が言葉を言い終わらぬうちに遮るようにケンは言った。
「交通事故に"遭った"んじゃない、
あんたは交通事故を"起こして" 死んだんだ」
「くっ…そ、それが一体どう違うと言うんだ?」
「スピードの出し過ぎでカーブを曲がり切れず、ガードレールを
飛び越えて歩道の電柱に激突 しかも当時、相当酒を飲んでたみたいだな」
「幸い歩道には誰もおらず、巻き添えになった人間は居なかった」
「そうだ 事故を起こしたのは俺の責任だ しかし、誰も傷つけてはないぞ!」
「なのに何でこんなに点数が低いんだ?俺は50年以上長きに渡り会社に勤め、
社会にも大きく貢献してきた 寄付やボランティア活動も数多く行った
多くの人々の幸せに貢献してきたと自負している」
「それが何でこんなたいした実績もない若い娘より点数が低いんだ?」
ケンは金山が
やがておもむろに口を開く。
「表向き…はな」
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