第3話 ロースコア ハイスコア

「お疲れ様、どうも有難う」


そう言うとケンはその女性に一礼して

再びコーヒーに口をつけた。


「たった今君の採点結果が出たようだ。ここに詳細が書かれている。」


ファイルから数枚の紙束をテーブルでコンコンと音を立てて揃え

軽く咳払いをしてケンはゆっくりと話し出した。


「採点?あぁ、私の生前の行いって事ですか?」

「そう天国、地獄、現状維持及び保留…その点数によって君の行先が決まる」


「保留?現状維持?」

「それについては後で説明する」


「多くの人は普通に生きて普通に遊んで普通に仕事をして死ぬ。

 だがその過程で少なからず罪をおかしたり良い行いをしたり

 様々な行動、言動、行為を行う それを点数化して採点するのさ」


「例えば、仕事これは主な加点対象となる」

「単純にその職に従事した年数、仕事内容等が考慮されるが社長だろうが

 弁護士だろうが水商売だろうがその職業自体に大きな点数差はない」

「その仕事が法に触れていない限り、どんな職業でも公平に扱われる

 『職業に貴賎無し』って言葉があるだろ?」


「端的に言うと"その仕事に誠心誠意尽くしたか"どうかだ」

「まぁどれだけ人の幸せに貢献したかの度合みたいなものだ。」


「ただ、法に触れていないと言っても例外もあるがな、そうだな最近だと…」


私はまだぼやけた頭でゆっくり考えた。

そういや昔友人が結構な剣幕で怒ってたな…


「転売屋とか?めっちゃ胸糞悪い奴らや」


「そう、それそれ。犯罪ではないがこれはさっき伝えた

『人の幸福への貢献』に反しているので減点対象になる」 

「尤も、殺人や強盗など明らかな犯罪は大幅な減点だがな」


「さて、本題に入ろうか 君の点数だが 500点満点で…

 

私は固唾を飲んでケンの次の言葉を待った。


「127点だ」


「そっか…たいして良い事した記憶もあんまりないけど

 やっぱ低いな、ちょっとショックかも」


「うむ、確かに平均より低いがこれは没年齢が36歳と若いので致し方ない。

 採点、つまり加点される期間も短いからな まぁこの辺は考慮させてもらう」


私はゆっくりと空になったコーヒーカップを受け皿に置いた。

そしてふとテーブルの奥を見やると、自分の採点結果の用紙とは別に

小さな透明のケースに入った印刷物?のようなものが目に入った。






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