Chapter12:Rose's Promise
薔薇の約束(前編)
今は使われていない
アウトホールシティ
カインは絶対連れてこれねえ場所だな、と俺は一息付いた。
地下闘技場が今ほどの活気のなかった頃は、この
男でも女でも、性の快感を求めてこの
そんな無数の快楽を提供する店が立ち並ぶ中、の大きな薔薇の華の絵を看板に掲げている店の前で俺は足を止めた。
他の多くの店のように、客引きの娼婦はいない。
店は看板そのまま
「いらっしゃいませ。本日はご指名でしょうか」
店内に入ると、
「ローズいるか?」
「いるぜ」
俺が
髪を
「ヴァイパー、生きてたんだな」
「お互い様だ。あんたがこの店の店主だって聞いた時は驚いたが、同時に安心もしたよ。昔の仲間が、この街でちゃんと生きてる」
「再会の
ローズは両手を広げ、大きな胸を突き出した。
「なんなら、そっから先も大歓迎さ。何たってここは天下のアウトホールシティ
にやりと笑うローズに対し、俺も苦虫を噛み潰す思いで笑い返した。
「いい。ガラじゃねえ」
「そりゃ残念。おれの魅力もまだまだか。それとも、まだ操を立ててんのかい?」
「それは……違う」
「この間もおれんとこに来た
「子猫ちゃんて……ロビンか」
ここに俺が来ることになったのは、ロビン達からの言伝だ。
色々あって、
そこで爺さんたちが出された条件が、ヴァイパーと話をさせること、だったのだ。
ここ最近のこの街の裏社会の喧騒には、俺も無関係ではない。
「関係ない、どころじゃないんだよ、ヴァイパー。渦中も渦中。あんたは今、アウトホールシティで繰り広げられている抗争劇の中心人物の一人だよ」
「なんでそうなるかねえ」
色々なところにホイホイ首を突っ込んだ報いだ。自業自得と諦めて、ロビンや爺さん達と一緒に、
そこでロビン達はローズに情報を提供してもらおうとしていたわけだが、まさかそれが俺のかつての知り合いだったとは知らなかった。
ローズは、俺がまだ探偵を始める前に街の助護センターで働いていた頃の同僚だった。
助護センターは、戦争孤児や傷痍軍人のケアを働いていた。
だがある日、助護センターが
──その事件で俺はサラを失った。
サラだけじゃない。
「おれはね、あんたには感謝してるんだよ」
「感謝?」
「サラの仇を取ってくれたことにさ。おれも元々施設でケアされる側だったのを、あいつに誘われて、センターで働き始めたクチだったからさ」
ローズはそう言うと、くるりと背中を向けた。
「情報が欲しいんだろ? 着いてきな。条件がある」
残念だが、旧知を温める時間ももう終わりかな。
俺はそう覚悟して、ローズの後ろについていった。
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